小笠原で国産コーヒー豆栽培 戦前からの種活用「古くからのもの新しい人へ」野瀬農園
父とともにコーヒー豆の栽培を始めたが、当初は知識も経験もなく手探り状態。日本での栽培に関する資料は乏しく、インターネット上の海外サイトを、翻訳サイトを使いながら独学で調べたという。実践を繰り返して少しずつ作り方が定まっていき、数本だった木を最大1300本ほどにまで増やしていった。
さまざまな栽培方法を試したというが、隣り合った木でも異なった成長を見せることもあり、もとみさんは「まだ分からない部分が多い」と話す。それでも「自然にはあらがわない」と決め、無農薬で栽培を続けている。
■さっぱりした味わい
小笠原での農作物の栽培には台風が大きく影響するという。野瀬農園は度重なる台風や大雨で地面に亀裂が入り、令和元年12月に広範囲で土砂崩れが発生した。コーヒー豆の木を300本ほど失うなど大きな被害が出た。
現在は、コーヒー豆だけで約800本、年に100キロほどが採れる。その他に温暖な気候と週に1度しかない船での輸送に耐えられる作物としてバニラビーンズなどのコーヒーに入れるスパイスの栽培も行っている。
野瀬農園のコーヒーはさっぱりした味わいが特徴といい、苦みが少なく、コーヒーが苦手な人でも飲むことができるといわれる。限られた人手で農園を運営していることもあり、コーヒー豆は主に年間300人ほどのツアー参加者に提供しているという。
コーヒー豆栽培を知って父島へ移住する人がいたり、本土の人に苗木を販売したりするなど島外にも国産コーヒー豆に関心を持つ人が増えつつあるという。もとみさんは「古くから長くやっていたことを新しい方々にも届けられることができた」と振り返る。ツアーの問い合わせは野瀬農園ホームページ(https://www.nosefarm.com/)まで。
(梶原龍)