藤井隆インタビュー「機嫌よくいるために、快適な場所をつくる」
お笑い芸人、アーティスト、俳優、司会とマルチに活躍する藤井隆。4月6日から東京・シアタートラムを皮切りに全国4カ所で公演する舞台『カラカラ天気と五人の紳士』に出演する。景品でもらった棺桶に誰が入るか、5人の紳士たちが議論を繰り広げる…というシニカルでウィットに富んだ別役実の脚本を、気鋭の若手演出家・加藤拓也が手がける話題作。2月下旬、稽古を前に準備中の藤井に、この作品について、また舞台で演じるということについてインタビュー。また、さまざまな分野で途切れなく活動をつづける彼に、ストレスへの対処法や最近気になるエンタメやカルチャーも教えてもらった。 【写真6枚】藤井隆、笑顔とシリアスな表情
観客との“長い約束”を果たすために
──舞台『カラカラ天気と五人の紳士』の稽古前のタイミングですが、今の率直なお気持ちを教えてください。 「正直、なかなかセリフが覚えられなくて。自分だけでやるよりも、共演者のみなさんと稽古しながら進めるほうが絶対楽しいことが分かってるので、早く稽古場に行きたいなと思ってます」 ──脚本では、いきなり棺桶が出てきますよね。 「自分がもし観客として観に行ったら、すごく鷲づかみにされると思います」 ──台本を読んで興味をそそられたところはありますか? 「今回は紳士5人が、5人で1つのような感じがあったり、2人で1つの人格なようなことを言っていたり、また次のシーンでは全然違う人になっているように感じたりするんですよ。そこが面白そうですね。これから演出を受けてどうなっていくのかすごく楽しみです」 ──「吉本新喜劇」時代から考えても、藤井さんのキャリアを語る上で舞台は欠かせないものだと思います。藤井さんにとって舞台はどういう場所ですか? 「僕はテレビよりも先に新喜劇の若手公演の舞台に立っているんですけど、最初は人様の前に出る想定のないまま、ただ演技や歌や踊りのレッスンに励んでいただけでした。だからいざ本番の舞台袖でお客様が見えたときにはじめて自分が舞台に上がる実感が湧いて、不思議な気持ちになったのを覚えています。えい!と思って飛び込んだ世界。振り返ってみてもまだ舞台の楽しみ方とか醍醐味については、実はよくわからないままなんです。今でもまだまだがむしゃらにやってますね。間違ったり、がむしゃらにできてないときもあるんですが、仕事は必死にやらないといけないんだなと思うのはお客さまとの“長い約束”を果たさなければいけないと毎回思うからです」 ──“長い約束”というと? 「何カ月も前からチケットを買ってくださっている方がいるわけです。その方々が楽しみにしている作品を絶対に成功させるという約束です。年齢関係なく、全員、幕が上がったら下りるまでとにかく走らなきゃいけないですよね。だから健康管理も大事。スタッフのみなさんも演者のみなさんも、その心意気でやっています」 ──トレーニングなどはされますか? 「諸先輩方も僕よりも若い方も、みなさんストレッチをしっかりやってらっしゃるんですよ。でも、僕は全然ストレッチができなくて、よく下手くそと言われていますね。一緒にやろうよって言ってくれる共演者の方もいるんですけど、もともとスポーツ経験が乏しく、運動神経がよくなくて」 ──踊りもキレキレなのでそんな印象はありませんでした! 「それは先生がいて教えてくださっているからで、自分自身では全然できていないんです。これからは体のことも気にかけていきたいですね」 ──よく「舞台には魔物が棲んでいる」と言いますが、今までに思いがけない舞台上のアクシデントはありましたか? 「ありますね。僕はとにかく舞台上での怪我だけは絶対に嫌なんですよ。したほうは落ち込むし、それ以上にさせたほうが後悔しか残らないから。舞台上に何か物が落ちてしまうハプニングなんてよく起こるんですけど、それも演者の怪我につながるから危ないと思って、連帯意識のもとなんとか回収したいと思っちゃうんですよ。もちろん勝手に拾いにはいけないので、お芝居場の流れでできるならやる、できないならできる方に任せるようにしているんですけど、僕は上手なほうなんですって。以前とある舞台で、相手役の大先輩が舞台上に物を落としてしまった際に、タイミングを見計らって拾い上げたことがあるんですけど、終わった後にその方から『助かったわ。あなたは爆弾処理班ね!』とお褒めの言葉をいただきました!」