二宮和也の“カッコ悪さ”が愛しかった『Stand UP!!』 山下智久たちとの青春の輝きがここに
主役にもかかわらず、一番カッコ悪いところにいた二宮和也
「ニノは、非常に親しみやすい感じ。そのへんにいそうな男の子の感じを出すのがうまい。それでいて、決まるところは決まる顔を持っている。その感じが好きですね。『ハンドク!!!』のときも、『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』でもちょっとクールな役をやってもらって。今回も一番カッコ悪いところにいるけど、その部分をしっかり担ってくれている。いろんな人にもまれながら、ほろ苦い思いを味わいながら、カッコ悪い奴がカッコいい奴に成長していく……そんな3カ月になればと期待しています」 「山下君は、マスクが非常に甘いんだけど、本音を語らない雰囲気がある。でも、言わずとも、優しさとか熱が伝わってくるんですね。無表情だけど、うしろにまわって、ほかの3人を大きく包んでいる感じを期待しますね。」 「 (小栗が演じる功くんは)“強いのか、弱いのか、両極端にふれているが、振り子が真ん中にいるときは、殆ど何もしないでぼーっとしている」 (『Stand UP!!』公式サイトより) 二宮は『Stand UP!!』で、主役にもかかわらず、一番カッコ悪いところにいる。健吾、隼人、功司はそれなりに得意なもの(音楽とかサッカーとか雑学とか)があり披露する機会もあるが、正平にはない。それがガンダムを操縦するのではなくガンダムになりたいという超越した考えに表れて見える。ほかの3人の調整役のような立ち位置の彼が最後の最後、何を見つけ、どんな行動をとるのか、彼の変化がエモーショナルで物語を牽引する。二宮和也は物語を作りあげてしまう俳優、彼自身が物語だという俳優であり、21年後の主演作『ブラックペアン シーズン2』でも、彼が立っているだけで何か心がざわつく物語が生まれそうな気持ちにさせられるのだ。 また、山下の“無表情だけど、うしろにまわって、ほかの3人を大きく包んでいる感じ”という堤の抱く印象は、この当時は最年少で10代だった山下に対してピンとこない表現のような気もしたが、やがて、主役を演じるようになって、しかもリーダー的な役回りが多い様子を見ると、当時からその片鱗を覗かせていたことがわかる。 小栗の役に関しては、確かに『クローズZERO』で圧強めな役をやりながら、背中を丸めて首を前傾させるとものすごくナイーブに見えたりして極端な俳優になっていく。 また、成宮は独特の美意識と華をもっていたが、それをださい方向に転じる力を持っていた。 正平、健吾、隼人、功司の4人が並んで歩いている場面も興味深く、二宮、山下は役柄とは別にセンターでアイドル(スター)っぽさがあり、成宮、小栗はその傍らでちょっと小技を出し入れしながら場を盛り上げている。それぞれの個性が決して団子状態にならず、細やかに違いながら、統一感を作っているのだ。そういう意味でも豪華共演である。 千絵役の鈴木杏は『青の炎』では二宮演じる主人公の妹役で、これもまた映画とドラマの飛距離が大きい。『Stand UP!!』の二宮と鈴木は見た目はださく、おかしなふるまいをし続けるが、最終的には見た目の印象を剥いで、本質の純粋さをほどばしらせる。演技巧者のふたりだからできることだと思う。
木俣冬