市川團十郎、13役早替わりの裏側は「まるでF1のピットイン。気合いを入れて5、6秒で着替え」裏方に感謝
歌舞伎俳優の市川團十郎が11日、都内で歌舞伎座「七月大歌舞伎」(1~24日)昼の部「星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)成田千本桜」の取材会を行った。 「歌舞伎に貢献して、後世に残していきたい」という思いで團十郎が中心になり、歌舞伎3大名作の一つ「義経千本桜」のドラマ性に焦点をあて2019年に初演。13代目にちなみ、知盛、いがみの権太、狐忠信など13役を早替わりで演じる。初演は急性咽頭(いんとう)炎で4日間、休演したが、今月初旬にインドネシアのバリ島で静養するなど、万全の体調で5年ぶりの再演に挑む。 源平の時代に生きた人間たちの数奇な運命や業(ごう)を狐の情愛と対比することで浮かび上がらせる。「平家と源氏は争いごとが起きて、登場人物が死んでしまう。その一方で狐は親に向かって純朴に進んでいく。人間が忘れてしまったものを、動物が教えてくれる」。院宣(いんぜん)、追討(ついとう)など難しい言葉は極力、分かりやすくするなど「歌舞伎を見たことがない人にも楽しんでいただきたい」と台本から見直している。 周囲への感謝も忘れていない。「早替わりは私も大変ですが、そんなことは言っていられない。裏方さんがF1のピットインのように気合いを入れて5秒、6秒で着替えさせてくれる」。また、公演のチラシは海外からの観客を意識して英語でも表記され「海外の方にも歌舞伎を楽しんでいただけるように努力しなければいけない」と思いを明かした。口上に英語を取り入れることも検討しているという。 襲名披露や5月の團菊祭では古典にこだわって上演しているが、7月公演は古典をモチーフにしながら初心者にも楽しめる工夫を凝らす。4階席の一幕見席は演目によって金額は変わるが、一幕1000円程度。「歌舞伎を見たことのない人も、気楽に見に来てください」と呼びかけた。 ◆「星合世十三團」で團十郎が演じる13役 左大臣藤原朝方、卿の君、川越太郎、武蔵坊弁慶、渡海屋銀平実は新中納言知盛、入江丹蔵、主馬小金吾、いがみの権太、鮨屋弥左衛門、弥助実は三位中将維盛、佐藤忠信、佐藤忠信実は源九郎狐、横川覚範実は能登守教経
報知新聞社