「キッズトライ」、初めて海を渡る。次なるステージへ、「トライ」に思いを込めて。
「海を渡る」。この言葉、みなさんにはどのように響くだろうか。「決断する」「覚悟を決める」「トライしてやる」、腹に決めた何かを感じはしないだろうか。 2018年に岩手県釜石市で産声を上げた、ラグビーを通じた国際交流イベント「キッズトライ」が、5回目の開催を迎えた2024年5月、初めて海を渡り、台湾で開催された。 釜石・熊本・福岡・広島のキッズ(小学4~6年生)が、海を渡って「トライ」を続けた4日間。主催した一般社団法人子どもスポーツ国際交流協会(略称「KSE」)で代表理事を務める向山昌利氏が「初めてのトライづくしだった」と語ったイベントの模様を、向山氏の言葉とともに振り返る。 5月3日金曜日、台湾へ。海を渡る「トライ」をすると心に決め、参加したキッズは25名。多くのキッズにとって「初めて親と離れての生活」「初めての飛行機」、さらに「初めての海外旅行」だ。 日本の4地域から集まったキッズ。ほとんとが初めて会う人たち。どうやって話しかけようか。台湾へ出発。初めてのパスポート、どうやったらいいんだろう。台湾での食事、どう食べていいかわからない。普段なら、なんてことのない買い物だって、どう買っていいかわからない。次から次へと「初めて」がキッズに襲いかかる。胸がどきどき、足がすくむ。「みんな、顔がこわばっていましたね。キッズをどうサポートしようか。僕たちもトライだなと強く思いましたよ」と、向山氏は当時の状況を語る。 5月4日土曜日、台湾を知る。台湾が誇る「お宝」を収めた故宮博物院で、台湾の歴史や文化を知り、台湾料理の食事、台湾のコンビニやスーパーで買い物をして、日常生活を学んだ。「日本人みんなで同じ経験をしたことで、日本チームの形ができてきました。個の集まりからチームへ。これで明日、異国の地で、異国の同年代の人たちと『チーム』で交わることができるなと、少し安心しました」と向山氏は感じたという。 5月5日日曜日、いよいよ台湾のキッズと交わる日がやってきた。台湾のキッズは30名。たしかに言葉はわからない。でも、ほんの少しだけど台湾のことを勉強した。そして私たちには最強の共通言語、ラグビーがある。言葉はわからなくても、ボールを通じてわかりあえることを知る。もう、この日の夜には、ついさっき初めてボールを交えたばかりの台湾の新しい友だち、その家族とも一緒に、夜市へお出かけ。笑顔があふれる1日。向山氏は言う。「壁にぶつかっていく『トライ』の大切さ、壁を乗り越えさせてくれるラグビーの凄さを、キッズは知ったはずです」。 5月6日月曜日、台湾から帰国。この4日間、キッズにはイベントが、「トライ」がたくさんあった。そして、これらのイベント、「トライ」のすべてを、25名全員でぶつかることができた。 「初日、緊張だけだった表情が、最終日には、みんなが自信に満ちたものになっていました。日本では初めてであっても、どうにかなります。でも、台湾では本当にどうにもならない。しかし、その不安から逃げずに立ち向かわなくては、これまたどうにもならないことにキッズは気づいてくれたと思います。まず自分が『トライ』して乗り越えようとした。そして全員で束になって、すべてに『トライ』して乗り越えた。みんなでスクラムが組めるようになった。4日間という短時間で見事な『ONE TEAM』になりましたね。私たちが思っている以上に、キッズの力は素晴らしいです」と、向山氏は目を細める。