本田圭佑が無観客のブラジルデビュー戦で通算100ゴールも次戦は不透明…彼はどんな心境でピッチに立ったのか
新天地でのデビュー戦を先発で飾り、いきなりPKのキッカーを任され、緊張することなく決めてみせる。ブラジルの古豪ボタフォゴFR入りした本田圭佑が、サッカー王国で鮮烈な第一歩を刻んだ。 1月下旬に加入が発表されたもののコンディション調整や選手登録の遅れ、そして3月に入ってからインフルエンザにかかったことでお預けになっていた本田のデビュー戦が、ようやく巡ってきたのはブラジル時間15日(日本時間16日未明)。ホームのエスタジオ・ニウトン・サントスにバングーACを迎えた、リオデジャネイロ州選手権の後半戦、タッサ・リオの第3節だった。 日本代表でもお馴染みだった「4番」を背負い、トップ下のポジションで先発した本田に大仕事が託されたのは、両チームともに無得点で迎えた前半28分だった。1トップのラファエル・ナバーロが相手ゴールキーパーに倒され、獲得したPKのキッカーを託された。 ペナルティースポットに慎重にボールをセットし、小刻みなステップを踏んでから、最後は利き足の左足を一閃。インサイドキックから放たれた低く、鋭い弾道は向かって右へ跳んだ相手ゴールキーパーの逆を突き、ゴールの左隅へ正確無比に突き刺さった。 ゴールを見届けた本田はくるりと振り向き、両方の拳を小さく握り締めるだけに努めた。何人ものチームメイトに抱きしめられ、手荒い祝福を受けてようやく笑顔を浮かべた33歳にとって、ボタフォゴでの初ゴールはプロになってから公式戦で決めた通算100得点目でもあった。
石川・星稜高から2005年に加入した名古屋グランパスでマークした13得点を皮切りに、VVVフェンロー(オランダ)で26得点、CSKAモスクワ(ロシア)で28得点、ACミラン(イタリア)で11得点、パチューカ(メキシコ)で13得点、そしてメルボルン・ビクトリー(オーストラリア)で8得点。7つのクラブで積み上げてきた99ゴールを、デビュー戦でいきなり大台に到達させた。 緊張感を増幅させる条件は、デビュー戦という状況以外にもあった。本来ならば4万7000人近くを収容し、熱狂の渦に包まれるエスタジオ・ニウトン・サントスは、ブラジルを含めた南米大陸でも猛威をふるう新型コロナウイルスの影響を受けて、いっさいの観客を入れない措置が取られていた。 不気味なまでの静寂が違和感をはじめとする、いつもとは異なる感覚を呼び起こす無観客試合に対しても、本田は試合前に自身のツイッター(@kskgroup2017)へポジティブな呟きを投稿している。 <無観客の試合でもモチベーションには悪い影響はないかな。小さい頃から常に観客をイメージしながらトレーニングしてたから> 言葉通りに開始早々の6分には相手選手のマークにあいながらも、左サイドから最終ラインの裏へ抜け出したMFルイス・エンリケへ絶妙のスルーパスを供給。エンリケのシュートを相手ゴールキーパーが左手一本で防いだことでアシストはつかなかったが、あわやの場面を演出した。 3分後にも自陣の中央で相手のマークを振り切ると、左タッチライン際を駆けあがった左サイドバックで、かつてジュビロ磐田でもプレーしたギレルメへロングパスを一閃。ギレルメのクロスはわずかにナバーロに合わなかったが、フィジカルの強さとチャンスメーク能力を見せつけた。 しかし、試合は1-1のドローに終わった。病み上がりが考慮されたのか、同点とされた5分後の後半18分に本田はベンチに下がっている。今回の舞台はリオデジャネイロ州選手権だが、ブラジル全国リーグというフィルターを通せば、1部のボタフォゴに対してバングーは4部の所属だ。