本田圭佑が無観客のブラジルデビュー戦で通算100ゴールも次戦は不透明…彼はどんな心境でピッチに立ったのか
直近の5試合では4勝1分けと圧倒していたバングーに勝ち切れなかった点に、ボタフォゴが強豪ではなく古豪と呼ばれている理由がある。本田の加入にファン・サポーターが熱狂し、本拠地で行われた入団発表に1万人以上が集結。救世主と崇めたこととも決して無関係ではないだろう。 ブラジルのサッカーシーズンは2つに分けられる。年明けから4月いっぱいまでは各州の選手権が、それぞれ独自の形で開催される。ボタフォゴが本拠地を置くリオデジャネイロ州は前半戦をタッサ・グアナバーラ、後半戦をタッサ・リオとして行い、それぞれの優勝チームが王者を争う。 ボタフォゴはタッサ・グアナバーラで、6クラブずつに分けられた2つのグループの上位2チームが進出する準決勝にすら進めなかった。加入した本田がスタンドで観戦した宿敵フルミネンセとのグループリーグ最終戦で惨敗すると、アルベルト・バレンティン前監督が解任されている。 Jリーグの鹿島アントラーズおよびセレッソ大阪を率いた経験をもつ、パウロ・アウトゥオリ新監督のもとでも状態は上向かない。全国リーグでは4部に所属するボアビスタとのタッサ・リオ開幕戦こそ辛勝したものの、強豪フラメンゴとの第2節では0-3の惨敗を喫している。 今後は残されたタッサ・リオのグループリーグ2試合、ブラジル全土のクラブが参加するカップ戦のコパ・ド・ブラジル、そして5月から7カ月あまりをかけてチャンピオンを決めるブラジル全国選手権の戦いで復活を期していく。本田の真価も5月以降の戦いで問われてくるだろう。 セリエAと呼ばれるブラジル全国選手権1部には20クラブが名前を連ね、ホーム&アウェイ方式のリーグ戦を行って頂点を争う。昨年はフラメンゴが10年ぶり7度目の優勝を決めた一方で、ボタフォゴは勝ち点で47ポイントも離された15位に低迷。かろうじてセリエBへの降格を免れた。
しかし、感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルスが、さらに大きな影響を及ぼしはじめた。本田のデビューから一夜明けた現地時間16日に、ブラジルサッカー連盟は主催するコパ・ド・ブラジルを無期限で中断することを発表した。ボタフォゴは3回戦に進出していて、ホームにパラナを迎えた10日の第1戦を1-0で勝利。18日にはアウェイでの第2戦を控えていた。 同じくブラジルサッカー連盟が主催する、ブラジル全国選手権に対しては現時点でアナウンスされていないが、事態が悪化すれば開催延期や無観客試合などの判断が下されるのは必至と言っていい。 一方で開催中の州選手権に関しては各州のサッカー連盟に実施可否の判断が委ねられたなかで、実際にプレーする選手たちは複雑な心境を抱えている。 バングー戦では本田を含めた先発イレブンが白いマスク姿でピッチに入場する、異例の光景が生まれている。世界保健機関(WHO)が世界的流行を意味する「パンデミック」を宣言した状況下で、無観客とはいえ試合を強行したリオデジャネイロ州サッカー連盟への抗議を意味するものだった。 試合開催の中止を求める動きはブラジル各地に広がっているだけに、各州の選手権もどうなるかわからない。ボタフォゴを勝利に導けなかったとはいえ、オランダ1部リーグのフィテッセの一員としてプレーした昨年12月以来、約3カ月ぶりに挑んだ実戦で個人的には幸先のいい再スタートを切った本田は、一転して目に見えない新型コロナウイルスの脅威に飲み込まれていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)