石破首相が夢見る「国防軍」構想のおぼつかない中身、トランプ大統領返り咲きでかえって逆鱗に触れる恐れも
■ 逆風にあえぐ石破新首相がどうしても実現させたい国防戦略 アメリカ次期大統領選挙で共和党候補のトランプ前大統領が勝利し、2025年1月20日に第47代大統領に就任する。大方の予想に反し、民主党候補で現副大統領のハリス氏に圧勝。雌雄を決する接戦州ほぼ全てを制する快進撃を見せつけた。 【写真】トランプ次期大統領との電話会談を終え、ホッとした石破首相だが、いばらの道が待っている! 「アメリカ・ファースト」を掲げ、「NATO脱退」「ウクライナへの軍事援助は即時中止、戦争を24時間以内に終わらせる」などとほえまくる“MAGA(Make America Great Again):アメリカを再び偉大な国にする」大統領”の返り咲きに、世界中、特に西側同盟国も戦々恐々のようだ。 圧勝で自信を得たトランプ氏が、外交面でも快進撃を図ろうと鼻息が荒くなることだけは確かで、日本の安全保障への大きな影響も心配される。 矢面に立つ石破茂新首相としては頭の痛いところだろう。10月1日に内閣総理大臣に推挙されたものの、こちらは直後の衆院選で与党が大惨敗。早くも「石破おろし」が聞こえるなど逆風にあえいでいる。 11月11日の特別国会での総理指名選挙で、石破氏の首相続投が本決まりになれば、これまで同氏が掲げてきた「日米地位協定の見直しと在日米軍基地の縮小」「憲法改正と第9条第2項削除」「国防軍の明記」などの実現に向けて動き出すことになるだろう。 だが、「独立国として自分の国は自分で守るのが当然」との主張を繰り返してきた“ミスター国防”にとって、トランプ氏の返り咲きは番狂わせとも言える。本稿では石破氏の防衛政策の一丁目一番地である「国防軍」について、その死角も交えながら解説したい。
■ 意味深長な「改憲草案」の中身 国防軍の議論は、10年以上前の2012年4月に公表された自民党の「日本国憲法改正草案」がベースで、石破氏は党憲法改正推進本部起草委員会の委員の1人として改憲草案の作成に携わり、その中身には絶対の自信を持っている。 最大の見どころは「第2章 戦争の放棄」内の第9条部分で、主題を「戦争の放棄」から「安全保障」へと変更した。 自衛権による武力行使を是とする考えのため、「戦争の放棄」のままでは都合が悪いと考えたのか、「戦争しないと強調しつつ、自衛なら武力を使うというのは矛盾している」との批判をかわそうという意図がにじみ出ている。 ただしそのままでは「では戦争は認めるのか」と内外から突っ込まれることも警戒してか、カッコ書きで「平和主義」も添えるなど、かじ取りは絶妙だ。 第9条1項はマイナーチェンジにとどめ「戦争放棄」の文言は存続する。続く第9条2項は特に注目で、現行憲法で高らかに謳う「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を全削除。 新たに「自衛権の発動を妨げるものではない」との一文を挿入し、前項(第1項)で「国権の発動としての戦争放棄」「武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争の解決手段として不使用」と強調しつつ、「自衛権の行使は除きますよ」との“ただし書き”をさらりと付けた。 これらを踏まえ、次に5項目からなる第9条の2を新設。いよいよ真骨頂の「国防軍」を明文化する。 ・第1項:わが国の平和・独立と国・国民の安全確保のため国防軍を保持し、総理大臣が最高指揮官 ・第2項:国防軍は国会承認その他の統制に服する ・第3項:国際社会の平和と安全(いわゆるPKO)や公の秩序維持、国民の生命・自由を守る活動ができる ・第4項:国防軍の組織・統制・機密保持の関連事項は法律による ・第5項:審判所の設置 続いて第9条の3(領土等の保全等)では「国民と協力して、領土、領海、領空を保全」と規定するが、これも意味深長な内容だ。