「見てもらうこと、何より励み」 東京と京都で珠洲焼の展示販売会
石川県珠洲市の伝統工芸「珠洲焼」の展示販売会が、東京と京都で開かれる。能登半島地震で、ほぼすべての作家が被災し、一部は制作を再開できていない。産地の現状を伝え、持続的に心を寄せるファンづくりを目指す。 【写真】清水武徳さんが穴窯で焼いた花器。降り落ちた灰が溶けることで、複雑な表情が生まれる=石川県珠洲市、林敏行撮影 若手や中堅の10人が、約200点を出品する。20~25日に東京・青山の文化施設「Spiral Garden」で、来年1月7~31日に「京都蔦屋書店」である。 地震で割れなかった作品を出す清水武徳さん(51)は、23年前から珠洲焼を作る。まきで焼く半地下式の「穴窯」は、余震の恐れで修理着手が9月になった。高さ約4メートルの煙突はれんが千個近くを自ら組み上げた。長さ約6メートルの窯の組み上げは、モルタルが凍る可能性があり、来春から再開予定だ。 隣接する自宅兼工房は大規模半壊した。工房の壁はシートで覆われており、成形した陶器の乾燥にストーブを使うと、引火の恐れがある。半乾きで凍ると割れるため、乾燥の工程に苦戦し、制作ペースが落ちそうだ。 「作品の数をそろえ、窯焼きを再開するのは、気候的に来秋になりそう。自分の作った窯で全部の作品を焼いてきたので、そこはこだわりたい」 会を主催する「WHYNOT.TOKYO」運営代表の高屋典子さんは、昨年5月の地震を機に、何度も珠洲へ通っている。元日の地震後、7月に今回の展示を企画。9月の豪雨で市内の共用窯の火入れが延期となり、作品をつぶして作り直した作家もいた。 「展示に向け、みんな頑張ってきた。実際に見て、買ってもらう。SNSなどで現状を知ってもらうことが、何より励みになる」。 共にまき窯で制作する清水さんと宮脇まゆみさん、日本文学研究者のロバート・キャンベルさんによる、伝統工芸と能登の再建の関係を考えるアーティストトークも、21日に開かれる。詳細はホームページ(https://whynot.tokyo)で。(林敏行)
朝日新聞社