公邸に「籠城」する韓国大統領、拘束令状再執行に立ちはだかる警護要員の「人間の盾」
【ソウル=桜井紀雄】韓国で「非常戒厳」を宣布した尹錫悦大統領に対し、内乱容疑での拘束令状の執行を3日に試みて失敗した捜査当局は、執行のやり直しに向けて検討を進めている。ただ、大統領公邸に「籠城」さながら大統領警護処の部隊が布陣し、執行を阻む状況が繰り返される限り、衝突なしに執行は困難とみられている。 【写真】ソウルの大統領公邸付近で、尹錫悦大統領の拘束令状執行に反発する支持者ら ■警護処の約200人がスクラム 韓国メディアによると、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」の捜査員や警察の機動隊がソウル市内の公邸に立ち入るのに際し、警護処は公邸警備を担う軍や警察の部隊に応援を要請したものの、いずれも応じなかったという。 軍部隊は、捜査員側が公邸の敷地に入るのに正門の開放も許可した。国会で弾劾訴追され、職務停止となった尹氏が軍や警察への影響力を喪失していることを印象づけた。 ただ、警護処の〝忠誠度〟は違った。捜査員らが尹氏がいるとされる建物の約200メートル前まで近づくと、警護処の要員ら約200人がスクラムを組み、何重もの「人間の盾」をつくって立ちはだかった。一部は銃を携帯していたとされ、公捜処側は「安全の懸念」から撤退を余儀なくされた。 ■捜査方法の仕切り直しも 尹氏は職務停止中とはいえ、大統領としての警護は維持されており、警護処の指揮・監督者も尹氏だとみなされている。 公捜処は大統領権限を代行する崔相穆副首相に、警護処に令状執行に応じるよう命じることを求めているが、崔氏の反応は伝えられていない。 警察から公務執行妨害容疑での出頭を求められた警護処長らは4日、「大統領警護業務が厳しい時期に席を外せない」として拒否した。警察が3日、処長の現行犯逮捕を進言したものの、公捜処が反対したという。衝突を懸念したようだ。 拘束令状の期限は6日まで。公捜処は警護処が阻止する限り、執行は事実上、不可能だとみており、捜査方法を仕切り直す可能性もある。