190SLとイメージが重なる後ろ姿 カイザー・ダーリン 161(2) おちょぼ口で今でも集客力は高い?
メルセデス190SLとイメージが重なる後ろ姿
彼のクリーム色のダーリン 161は、アメリカ・ペンシルベニア州で販売された。1年もない生産期間の、前半で製造された車両だ。そのオーナーは1967年まで所有し、1984年に2番目のオーナーがレストア。公道走行可能な状態へ戻された。 その後、メカニズムに改良が加えられ、2018年にミズーリ州の博物館が購入。今は、スミスが大切に維持している。 彼は、曇りやすいサイドウインドウと、展開しにくいソフトトップに不満を抱いている。ボンネットが前面に広がり、運転席からの視界は悪い。ポケットドアの開口部は狭く、乗り降りしにくいことも認める。それでも、ダーリン 161を愛しているという。 ポケットドアは、過去に1度動かなくなった。潤滑オイルをスプレーしたら、すぐに復活したそうだ。 写真で見る以上に、ダーリン 161は大きい。全長は4674mmある。ソフトトップが格納された斜め後ろの容姿は、メルセデス・ベンツ190SLとイメージが重なるようにエレガント。大きなテールライトは、サルーンのカイザー・マンハッタンからの流用だ。 長いボンネットの内側には、シングル・キャブレターを載せた直列6気筒エンジンが収まる。シリンダーブロックは、グリーンに塗られている。 2シーターのキャビンは見た目より広く、インテリアのデザインは欧州車風。オースチン・ヒーレーのような大きなメーターパネルに、回転計など4枚のメーターが並ぶ。ダッシュボードは、美しいソフトパッドが包む。
異端的なスタイリング 今でも充分な集客力
シートは、ボディカラーとコーディネートされたビニールレザー張り。角度調整できるのは運転席側だけ。ブレーキとクラッチはペダルの間隔が狭すぎて、筆者の足裏では踏みにくい。 直列6気筒エンジンは滑らかに回り、ノイズは穏やか。刺激的なパワフルさはないものの、ダーリン 161を活発に走らせるのに不足ないトルクが湧き出てくる。レッドラインは4500rpmから。普通に運転している限り、3000rpm以下で足りる。 急な登り坂でも、平然と進んでいく。3速マニュアルをシフトダウンし、追い越しをかけられる中間加速も披露する。 シフトレバーはスポーティに見えるが、ストロークが長く、急いで変速するのには向いていない。実際のところ、頻繁にギアを選び直す必要もない。ステアリングホイールは、驚くほど軽くダイレクトだ。 トレッドが広く、全高の低いダーリン 161は、想像以上に運転しやすい。ボディシェルのきしみを抑えるように、サスペンション・スプリングは優しい。アンダーステアは最小限で、きれいな孤を描いてコーナリングできる。 積極的にカーブを攻めるような、ドライバーズカーではない。それでも、スポーティなダッシュを堪能するのに不足ない熱意は宿している。 異端的なスタイリングは、クラシックカー・イベントに限らず、出向く先々で大きな注目を集めるという。今でも、充分な集客力を備えているようだ。
カイザー・ダーリン 161(1954年/北米仕様)のスペック
価格:3668ドル(新車時)/10万ポンド(約1940万円/現在)以下 生産数:435台 全長:4674mm 全幅:1716mm 全高:1291mm 最高速度:152km/h 0-97km/h加速:15.0秒 燃費:9.6-10.6km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:998kg パワートレイン:直列6気筒2638cc 自然吸気サイドバルブ 使用燃料:ガソリン 最高出力:91ps/4200rpm 最大トルク:18.6kg-m/1600rpm トランスミッション:3速マニュアル(後輪駆動)
マーティン・バックリー(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)