【大学野球】9年ぶりの大学日本一へ 早大エースナンバー伊藤樹「今季負けなしで終われるように」…仙台育英センバツ8強右腕
東京六大学野球春季リーグ戦は、早大が勝ち点5の完全優勝で幕を閉じた。快進撃の立役者は、仙台育英のエースとして2021年センバツ8強に導いた伊藤樹(たつき、3年)だ。今季からつけるエースナンバー「11」にふさわしい投球を続け、先発した7試合全てで勝利をもたらした。10日開幕の全日本大学野球選手権(神宮、東京D=報知新聞社後援)では全国の強豪を相手に活躍が期待される。 歓喜のマウンドには、背番号11の雄姿があった。早慶戦第2戦。12―2の9回2死。早大・小宮山悟監督(58)は満を持して「投手・伊藤樹」と交代を告げた。四球を1つ出したが、最後の打者を三ゴロに打ち取った。ナインがマウンドに駆け寄り、1年からバッテリーを組む印出太一主将(4年)へと、笑顔で飛びついた。 「高校1年の夏、胴上げ投手になって、そこから優勝できていなかった。優勝するところまで投げられて、すごくうれしかったです」。リーグ最多の54回1/3を投げ、防御率1・49と結果を残した右腕は、控えめに喜びを語った。 今春から早大のエースとなったが、小宮山監督は高校時代から伸びしろを買っていた。入学後は1年春からリーグ戦に登板し、秋にはクローザーに。先発を任された試合は何とか器用にゲームをつくっていたが、四球が多く、さえない投球が続いていた。 そこで昨夏から上半身のトレーニングに注力。複数の種類の懸垂をこなすなど、体の特性に合ったメニューを学び実践した。体重こそ2キロ増だが、風貌(ふうぼう)は見違えるほどに。その成果は冬ごろから形になってきた。指揮官は自覚を促す意味を込めて、エースナンバーを渡した。本人も「去年の負けがあっての春。なおさら勝ちたい気持ちが強い」と、えんじ色のグラブに「勝ち年」と刺しゅうを入れた。 迎えた今春。球速もスタミナも上昇し、スケールアップした伊藤樹がいた。他校の強打者を抑え込み、各チームのエースと投げ合う厳しい試合に勝つ。当初、グラブには「勝負の年」と入れる予定だったが「負」を使いたくなく「勝ち年」としていた。文字通り一度も負けがつくことはなく、不敗神話は継続された。 大学選手権では9年ぶりの日本一へ挑む。「今季、負けなしで終われるように、自分らしい投球でチームを勝たせます」と全力投球を誓ったエース。全国の舞台でも快投を見せ、再び歓喜の輪をつくる。 (臼井 恭香)
報知新聞社