ウクライナから避難した高校生、弁論の長崎県代表に 14日に大会…戦争の現実と平和の尊さ訴え
ロシアの侵攻が続くウクライナから避難しているアレクサンダー・サマルハさん(18)=九州文化学園高3年=の長崎県佐世保市での生活が約2年半が過ぎた。学校や地域の人たちに見守られ、充実した学校生活を送る。その一方で母国を思うと「(ロシアを)許せない気持ちが大きい」という。14日に福岡市である「全九州高校総合文化祭福岡大会」弁論部門に県代表として出場し、戦争の現実や平和の大切さなどについて思いを語る。 11月下旬のある日、サマルハさんは同じクラスの生徒たちと学校近くの畑にいた。地域の人に教えてもらいながらタマネギを植えたり大根を収穫したりして「友達と過ごす時間が一番」と同世代と過ごせる時間を楽しんだ。 2022年6月、祖母や母らと一緒に佐世保市に避難。長崎日本語学院を経て23年に九文高の2年生に編入した。来日時、全く分からなかった日本語は友人との会話などで覚え、今では通訳なしでコミュニケーションを取れるようになった。学校のサポートで読み書きできる漢字も増え、定期試験も他の生徒と同じように受ける。教科によってはクラスでも上位の成績という。 一緒に避難した母と妹は父親が残る母国に戻り、現在は学生寮で1人暮らし。家族とは週に数回、テレビ電話で話す。交流サイト(SNS)で見つけたレシピを参考に朝夕は自炊し、休日は友人家族に誘われて遠出したりバーベキューしたりして過ごす。学校、友人、地域の人たち…。サマルハさんはたくさんの支えに感謝する。来春からは長崎国際大に進学。以前、家族旅行をして以来、憧れているキャビンアテンダントを目指して勉学に励む。 離れて暮らす家族のことはいつも頭にある。実家は比較的安全な地域にあるが「(ウクライナの)どこであってもミサイルが飛んでくる可能性がある」と言い、最悪の事態になる可能性もゼロではない。日本に届く母国の映像には戦火がやまず、泣き叫ぶ子どもの姿もある。子どもたちまでもが犠牲になることへの怒りに比例して、何もできないむなしさが募る。 弁論のテーマは「戦場から来た者として」。伝えたいのは、当事者となった自分の気持ちや戦争の悲惨さ、平和の尊さだ。ロシアの侵攻によって、順調だった生活は過酷な日々に一変した。仲が良かったロシア人の友人に敵扱いされるようになり、SNSに悪口を書かれたこともある。家族や友人と離れ離れになり「戦争はあらゆるものを破壊し、奪い、変えてしまう」と身をもって感じたという。 侵攻が始まってもうすぐ3年になるが終わりは見通せない。弁論では、一般の人たちが犠牲になる理不尽さを指摘し、こう締めくくる。「命がなくなることの重大性を自分ごととして考えることができれば、戦争をなくすことができると信じる」