「日本の刑務所ヤバい…!」監獄内を描いた日本映画(4)更生プログラムに向き合う受刑者たちに迫る記録映画
今回は刑務所を舞台にした日本映画5本をセレクト。普段見ることが出来ないからこそ気になる刑務所内では何が行われているのか...。囚人たちの日常を描いた喜劇作から、更生プログラムに向き合うドキュメンタリーまで、受刑者たちのリアルな姿を観察できる刑務所映画を一挙に紹介しよう。今回は第4回。(文・寺島武志)
『プリズン・サークル』(2020)
製作国:日本 監督・製作:坂上香 【作品内容】 2年にわたり日本国内の刑務所に初めてカメラが入り完成させたドキュメンタリー作品。その舞台となったのは「島根あさひ社会復帰促進センター」は、官民協働の新しい刑務所。警備や職業訓練などを民間が担い、ドアの施錠や食事の搬送は自動化され、ICタグとCCTVカメラが受刑者を監視する。 【注目ポイント】 本作で描かれる更生プログラムの新しさは、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(Therapeuticommunity=回復共同体)」というシステムを日本で唯一導入している点にある。 受刑者たちはプログラムを通じて、窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死など、自身が犯してしまった罪はもちろんのこと、貧困、いじめ、虐待、差別といった幼い頃に経験した苦い記憶とも向き合わなければならない。 カメラは服役中の4人の若者を追い、彼らがTCを通じて新たな価値観や生き方を身につけていく姿が映画を通して描かれる。TCを採用した刑務所では、再入所率が半分以下であり、再犯防止効果が期待されている。本作には、負の連鎖を断ち切るために必要な部分がしっかり映し出されているのだ。 TCを導入している刑務所は現時点で決して多くなく、これはまだ小さな一歩だが、しかし大きな前進でもある。この制度を実現するために奮闘した人、そこで働く人、そして、この施設にカメラを向けた監督はじめ制作スタッフ、加えて、施設で学び成長する姿を見せてくれる受刑者も含め、映像化することによって、人間が“学び直す”ことができることを示してくれてもいる。 こうした新たな形の“罪の償い方”が、この国で定着していくことを願うばかりだ。