リクルーティング/採用分野でも進む生成AI活用、スキルテストの自動化などコスト削減の動きが加速
生成AI × リクルーティングで注目されるスタートアップ
「生成AI × リクルーティング」領域では、リンクトインのような大手プラットフォームだけでなく、スタートアップの取り組みも活発化している。 注目株の1つは、2021年に創業したばかりのロサンゼルス発Micro1だ。 同社はもともと受託開発ビジネスを生業としてきたスタートアップだが、その知見を生かしたテック人材リクルーティングに特化した生成AIプラットフォームをリリースしたことで、投資家の関心を集めている。 同プラットフォームは、テック人材の採用にかかるプロセスの大半を自動化しつつ、ハイスキル人材のみを抽出することを売りとしている。想定されるユーザーは、上記のようにテック人材が不足している企業だ。 ユーザー企業は、同プラットフォームを介してグローバルなテック人材プールにアクセスすることができる。その際、すでに登録・評価されている人材を選び、その上で自社でカスタマイズしたテストやインタビューを行うことが可能となる。スキルが保証された人材プールにアクセスできることになり、検索プロセスを大幅に短縮することができる。 注目したいのは、30人ほどの小規模チームであるMicro1がどのようにグローバル労働市場からハイスキル人材のみを抽出できるのかという点だろう。 テック人材の採用プロセスでは通常、プロジェクトで使うプログラミング言語をどれほど理解しているのかを測るコーディングテストが実施される。しかし、テスト内容やその結果を解釈できる人材が必要であり、プロセス自体も煩雑になりやすく、リクルーティングコストの増大要因となっている。 Micro1は生成AIを活用することによって、まずプラットフォーム上で応募者の履歴書スクリーニングを行う。同社によると現在、世界中のテック人材による登録応募が1日200件発生しているという。 履歴書スクリーニングの後に実施されるのが、コーディングテストだ。このテストでは同社が開発した「gpt-vetting」と呼ばれる仕組みにより、自動で出題され、その回答が評価される。テストは各プログラミング言語の理論問題とコーディング問題で構成されている。理論テストではOpenAIの音声認識AI「Whisper」が活用されており、受験者は口頭で回答することが求められる。その際の音声は、不正防止分析にかけられ、最終的にテスト結果の「信頼度(trust score)」として算出されることになる。 コーディングテストが終了すると、Micro1の担当者による受験者インタビューが実施される。1~2回のテクニカルスキルに関するインタビュー、そしてソフトスキルインタビューという流れだ。インタビュー内容は、AIによる分析にかけられ評価される。 AIによる自動化だけでなく人間によるインタビューも交え、世界各地から高度スキルを持つテック人材を抽出し、その人脈を自社のアセットとして構築している点がMicro1の大きな強みだ。この点に注目する投資家は多く、最近同社が実施した資金調達ラウンドでは、目標調達額を大きく超える額を獲得している。 Micro1によると、同社はプレシードラウンドで200万ドルの調達を予定していたが、投資家からの申し込みが予定を超え、調達額は当初予定を130万ドル超える330万ドルになったという。これにより同社の評価額は3,000万ドルに増加した。