障害の壁を越え 大阪でアンリミテッド・パラ陸上
障害でクラス分けしないパラ陸上競技会「近畿アンリミテッド・パラ陸上」がこのほど、大阪市東住吉区のヤンマーフィールド長居で開かれた。障害の程度や有無を問わず、一般参加者を含めてアスリートが同じルールで戦う形式で、国内初開催。障害の異なる選手や幅広い世代の市民が障害の壁を越えてスポーツシーンを共有することで、パラスポーツのすそ野を広げ、パラアスリートの強化育成を図ろうと開催された。
開会に先立ち、スキー・ノルディック複合長野五輪代表で、スポーツキャスターの荻原次晴さんがあいさつし、「きょうは多くのアスリートたちが参加するが、だれかと比べるのではなく、全力で戦うことをテーマにがんばってほしい」と激励した。 アンリミテッドとは無制限の意味。パラ陸上競技会は通常、同じ競技でも選手は障害によってクラス別に戦う。実力伯仲の好勝負が期待できる半面、競技種目が細分化してスポーツのだいご味が伝わりにくい一面も否定できない。アンリミッテッド・パラ陸上は、男女、車いす・立位などのシンプルな区分けに留め、障害による細かいクラス分けをしない国内で初めての大会となった。 競技はフィールドが100メートル、800メートル、1500メートル、1600メートルリレーなどで、トラックは走幅跳、砲丸投げ。一般市民からの参加も募集し、出場選手200人のうち、障害者と一般市民の比率はおおむね半々。トラック競技であれば、異なる障害を持つアスリートと、幅広い世代の市民アスリートが隣合わせで走り合う。異色なレース展開はパラアスリートにも市民アスリートにも新鮮な体験になった。 レースが始まると選手がばらけ、ときに大きく差が開く。勝ち負けではない。荻原さんが指摘するように、人と比べるのではなく、「自分で全力」がテーマになってくるわけだ。
会場内で交流促進にひときわ貢献していたのは、パラ陸上界を引っ張る山本篤選手。競技が始まる前にリオパラリンピックなどで獲得したメダルを披露し、市民がメダルを持って重さを実感するのも大歓迎。「メダルを振ると音が鳴り、メダルの色によって音が違う」などと、視覚障害者にも配慮したメダル談義を通じてパラスポーツへの理解拡大を求める。 大会への評価を問うと、「素晴らしい大会」と前置きしたうえで、「競技を通じて自分と向き合う、自分に挑戦する、自分が楽しむのが一番。皆さんも実現してほしい」と呼びかけた。選手同士の歓談の輪に積極的に加わり、家族連れとの記念撮影にも気軽に応じるなど、ファンサービスに熱心だった。 山本選手はリオパラ大会で銀メダルに輝いた走幅跳に出場。踏み切った後、空中で体を傾けて跳躍する独特のフォームで記録を伸ばすと、大きな歓声が挙がった。優勝を飾った表彰台で、「きょうは近くで観ていただいたので、僕自身楽しく跳べました」と、アンリミッテッド大会効果を笑顔でアピールしていた。