「サービス残業」をなくせ 弁護士がGPSで「残業の証拠を残すアプリ」開発
「サービス残業」問題について語る、日本リーガルネットワーク代表の南谷泰史弁護士
残業代を支払わないで労働者に長時間労働をさせる。そんな「サービス残業」が蔓延し疲弊する社会を変えようと、スマホのGPS機能で労働時間を自動的に記録し、会社側に残業代を請求する際の証拠として用いることができるアプリを、弁護士らが開発した。弁護士らは「残業代を支払わず、不正をしている企業が得をするような社会を変えたい」と開発の意図を語る。
GPSで会社にいた時間を自動的に記録
スマホのGPS機能を用いて、残業時間を自動的に記録する無料のアプリ「残業証拠レコーダー」は、日本リーガルネットワーク(東京都千代田区)が、2016年5月にアンドロイドアプリとして公開。近日、iOS版も公開する予定だという。 アプリでは、最初に10個ほどの質問に答えるだけで、自分の残業代の概算を知ることができる。会社の場所を設定しておくと、スマホのGPS機能で、会社にいた時間を労働時間として自動的に記録し、労働基準法や判例、行政通達などに基づいて残業代を算出してくれる。営業職などの場合は取引先を登録しておくことで、取引先所在地にいた時間も勤務中として記録される。
「裁判の強力な証拠に」
「裁判の証拠」として採用される記録を残すために、GPS記録やその際に残したメモはサーバーに送られ、サーバーの情報を改変することができないしくみだ。後日アプリの中で手動で勤務時間を調整することもできるが、その際にはすべて変更履歴が記録される。スマホを会社に置いていくなどしてわざと残業したという嘘の記録を作った場合、実際の交渉や裁判では他の証拠と併せて会社側に簡単に反論されてしまうため、正しく使用することが必要だ。 未払い残業代を会社に請求する場合、同社のサーバーに記録された情報を弁護士に持っていけば、裁判の際に「強力な証拠」として未払いの残業代を主張できる、と同社は説明する。アプリには北海道から沖縄までの全国の約50人の弁護士が掲載されており、アプリのデータを提出して相談や依頼をすることも可能。アプリの掲載弁護士以外に証拠を発行する場合は、有料の「証拠保管手数料」がかかる。