シングルマザー支援に「シェアハウス」(下) 悪質業者を防ぐ体制づくりを
困窮するシングルマザーの暮らしを支援する「母子世帯向けシェアハウス」が注目されています。精神的、経済的自立を促す効果が期待される一方、民間主体の運営のため資金や安全面に課題も。名古屋の先進例を取り上げた「上」に続き、関連する法制度などを整理します。
新たな「住宅セーフティネット制度」では原則、対象外
母子世帯・父子家庭や単身の高齢者、障害者、生活保護受給者などは一般的に住宅の確保が困難です。こうした人たちを「住宅確保要配慮者」として国・自治体は公営住宅や各種施設の整備、家賃補助などの施策で支援してきました。 しかし、人口減少の中で公営住宅などは大幅な増加が見込めない一方、民間の空き家や空き室は増加しています。そこで、空き家・空き室の活用と住宅確保要配慮者向けの住宅提供を結びつける新たな施策が「住宅セーフティネット制度」として検討され始めました。 具体的には2007年に制定された「住宅確保配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(通称・住宅セーフティネット法)」を17年に一部改正。要配慮者の入居を拒まない住宅を「登録住宅」として登録し、そうした住宅の改修や家賃の低廉化などに補助がつくことになりました。 これを機に、要配慮者の住宅供給には民間の小規模な事業者だけでなく、全国10万戸規模の雇用促進住宅をリノベーションする企業などが参入。シングルマザー支援にも期待がかかるようになりました。 ところが、母子世帯向けシェアハウスは原則、この制度の対象外です。理由はシェアハウス(共同居住型住宅)を主に単身者向けと想定しているから。そのため対象は専用部分(個室)が「定員1人」で床面積が9平方メートル以上。母子が一緒に個室で暮らすシェアハウスは当てはまりません。 制度を管轄する国土交通省住宅局はこの実態を認めた上で「母子世帯シェアハウスを制度からことさら排除しているつもりはない」としています。 基準は自治体によって緩和でき、例えば岐阜県は定員を「各居室部分の床面積÷9平方メートル」人と規定。さらに3歳未満は「0.25人」などと算定することによって11.25平方メートル以上の個室なら3歳児のいる母子家庭も入居できるようにしているそうです。「現時点では岐阜県のように各自治体の基準緩和で対応してもらえたら」と国交省の担当者。 しかし、こうした基準緩和はまだ一部にとどまっており、母子世帯向けシェアハウス事業者のネットワークは全国レベルでの緩和を求めています。