土石流災害の発生から3日で3年 住民の不信感を背景に被災地の用地買収が進まず復興計画は難航
復興にもスピード感はもたらされるのでしょうか。静岡県と熱海市は土砂が流れ下った逢初川の拡幅や道路の新設といった復興計画を進めていますが、住民側の不信感を背景に用地買収は難航しています。 小松こづ江さん: 「全部が反対しているわけじゃないんですよ。 おかしいと思ったから「おかしい」というだけのことなんです。」 被災者の一人、小松こづ江さん、74歳。 土石流によって自宅の一部と基礎部分が流され、ずっと神奈川県湯河原町で避難生活を送っています。 3年前、海と山に囲まれた伊豆山の町は一変しました。 小松さんの家は、土石流が流れ下ったすぐ横に建っています。 基礎を支える柱は、今もむき出しのまま…。 静岡県は、大雨のときでも多くの水を流せるように、逢初川の川幅を広げる改修工事を行っています。 また、熱海市は、川の両岸に幅4メートルの道路を整備する計画で、緊急車両の出入りや避難ルートを確保するほか、周遊ルートとして観光にも役立てたい考えです。 ただ、その道路は今よりもかさ上げされた場所に造られる計画です。 小松こづ江さん: 「4メートル上がるっていうことはね。玄関なんてどうするのって。4メートルこういうふうに上がるんです。こういうふうな計画しているんですけど。どうですかっていうことを、皆さんに何で聞かなかったのって。そうすればやり方だってあるんじゃないのって、私は思っているんです。」 熱海市は、早ければ7月末にも、道路の高さ計画を示したい考えです。
土地を手放すよう求められている住民も
これまで、こうした復興計画について個別の住民説明会を開催してきましたが、被災した住民からはこんな声も… 多田憲史さん: 「ずっと長く住んでいる人間のいる方へ(川を)広げているんで、これは追い出したいんだなというね、そういうふうに受け取りました。」 自宅が全壊する被害に遭った、多田憲史さん、57歳。 その土地には、鎌倉時代から先祖代々暮らしてきたといいます。 しかし、復興計画では、最大で幅8メートルの土地を手放すよう求められています。 多田憲史さん: 「復旧復興というのは、インフラや土地、建物ばかりではなくて、今まで住んでいた人間が今まで通りに住めるというのが復旧復興だと思うんですね」 もう3年も経ってしまったなあ、と。何も進まないまま… 多田さんは、住民側に何の相談もなく土地を譲ってほしいと求められたとして、熱海市への憤りを隠しません。 復興計画に必要な土地の取得は6月時点で75%にとどまっています。 熱海市は今年3月、計画の2年延期を公表しました。 熱海市・斉藤栄市長 6月28日: 「避難された方が帰還できるということ。それに加えて、あそこに新たな人口が流入できるようなことも町づくりとして考えていくことが、次のステップというか重要だというふうに思っております。」 行政と住民側の足並みの不一致は、復興計画の遅れという形で表れています。 多田憲史さん: 「その2年間の間に、また伊豆山を出ていく、住んでいた元住民がいるわけですよ。どんどん少なくなりますよね」