朝9時出勤の当直医師が帰ったのは...翌日の午後7時半だった『医師の過酷実態』2割が過労死ライン超え「仕事増えるけど人増えない...病院の努力だけで解決は絶対不可能」
これまで労働時間が実質“青天井”だった医師たち。4月から始まる医師の働き方改革で時間外労働の上限規制が適用され、原則年間960時間(月あたり80時間)までとなる。しかし、上限時間を超えて働く医師たちの長時間労働によって支えられてきた日本の医療。働き方改革を前に、今の医師の勤務実態に迫った。 【写真で見る】『病院にいた時間は35時間』救急診療、勉強会、会議…当直医師の勤務に密着
24時間診療病院 当直医師の日常
日曜日の午後9時半ごろ。5歳の男の子が救急車で運ばれてきた。家で転倒して右腕に強い痛みを訴えていて、レントゲンを撮ると鎖骨を骨折していたことがわかった。 (付添人に話す医師)「ここが折れています。鎖骨骨折。だけど直ちに手術が必要というわけではない」 ここは千葉県流山市にある東葛病院。市内では最大の病床数(366床)で、24時間365日休みなく診療を続ける民間の総合病院だ。医師の土谷良樹さん(49)、内科部長を務めているが、自らも夜間の当直勤務をしている。患者は途切れることなくやってくる。 80代の男性が発熱と息苦しさを訴えて救急車で運ばれてきた。 (患者に話す土谷医師)「こんばんは。しゃべるのもつらいか?」 症状は深刻そうだ。胸のCT画像を撮影すると、肺炎を患っていることがわかり、緊急入院が決まった。 (付添人に話す土谷医師)「両肺がひどい肺炎になっています。外から一生懸命、酸素を投与しているけどギリギリです。これ以上悪くなると人工呼吸器を付けないと死んでしまうかもしれないくらいひどいです」
当直の仕事だけじゃない…勉強会や予約患者の診察も
夕方5時前から翌朝9時前まで、2人の当直医師で、あらゆる症状の救急診療を行っている。 (土谷良樹医師)「この地域の住民の方々の健康を守る仕事ですから、一通りのことは診て。(Q患者さん多いですよね?)そうですね、こんなもんかもしれないです。すごく多い件数ではないです」 当直の仕事はこれだけではない。外来患者の診察の合間に約300人の入院患者を見回ることも業務の一つだ。 (土谷医師)「ちょっと呼吸苦しいですか?」 (患者)「うん」 (土谷医師)「少し酸素を送ってくれるマスクの方に替えましょう」 落ち着いたのは午前0時前。この日は朝9時には出勤し、日中はオンラインで学会に参加していて、病院に来て約15時間がたっていた。 (土谷良樹医師)「(Q体力的には?)全然大丈夫です。自分ができることをしているだけなので。医者になってからずっとやっていますから」 その後も患者は訪れ、結局休むことができたのは午前3時半。4時間ほどの仮眠は取れたが、2人の医師で外来患者25人を診察した。 そして翌朝。当直明けは朝8時から研修医と勉強会を行い、その後は日勤の医師らに引き継ぎをしていく。 しかし、まだ帰ることはできない。腎臓病治療が専門である土谷さん。午前中に予約の患者約40人を診察した。