国益を守るためには臆するな…「わたしと日産」日産元社長とマクロンのガチンコ勝負がヤバすぎる
---------- 歴史学者の磯田道史氏は 「日産の歴史的経験を未来の道しるべに。本書の姿勢に心打たれた」と推薦する。高度成長、バブル、経営危機、V字回復、そしてゴーン逮捕──カルロス・ゴーン会長のもと、日産社長を務めた男はそのとき何を考えていたのか? 元・日産社長による衝撃の回顧録『わたしと日産 巨大自動車産業の光と影』がついに刊行された。赤裸々に明かされる白熱の手記の中身を明かそう。グローバル化の渦中にいる全ビジネスマン必携の書だ。(文中敬称略) ---------- 【写真】日産元社長・西川廣人氏が出版した激ヤバ回顧録
「フロランジュ法」をめぐる攻防戦
2014年、フランス政府は「フロランジュ法」という自国優位の法律を制定する。フランス政府など株式を2年以上保有する株主に、2倍の議決権を与えるとんでもない法律だ。 西川廣人・元社長は、フランス政府との交渉に当たるようカルロス・ゴーンから直接任命された。 〈二〇一五年当時、日産のトップはゴーンだった。そのゴーンの指名で私が日産を代表してフランス政府との交渉に当たることになった。ゴーン本人はルノーのCEO兼会長という立場でこの件に当たる必要があり、自分以外に日産を代表して意見を述べる人間が必要であった。 前年成立したフロランジュ法を適用すれば、フランス政府はルノーに対して従来の二倍の議決権を得ることになる。日産はフランス政府の影響が強まることを懸念していた。 当時、日産とルノーのトップを兼ねていたゴーンはこんなことを言った。 「こういう事態になった以上、やはり日産としても心配だ」 「日産として、ちゃんと意見を言った方がいいと思う」 それで白羽の矢が立ったのが、この私だったのである。日産の取締役会のメンバーであり、ルノーの社外取締役も務めていたからルノーの事情もよく知っている。 「サイカワサンはフランス人の部下もたくさんいるから、フランスでもよく知られている」 そんな声もあったようだ。私一人ではなく、チームを組むことになり、そのメンバーもゴーンが決めた。 (略) どういうスタンスで交渉に臨むべきか、少々迷っていた。 少なくともゴーンは立場上いろいろと言いにくいこともあるだろうし、ここは日産代表としてストレートな物言いをした方がいいだろう。そう思って、 「ゴーンさん、日産としてストレートに物を言う。そういうスタンスで行きますけど、問題はありませんよね」 とだけ念を押しておいた。〉(『わたしと日産』197~199ページ)