為替ディーラーの役割は「アルゴのDJ」に-AIで仕事一変
(ブルームバーグ): アルゴリズム取引は為替ディーラーの役割を根本的に変えつつある。コンピューターモデルへの依存度が高まる中、ディーラーの間ではその責任の所在を問う声も聞かれるようになっている。
バイサイドの為替トレーダーからは、テクノロジーの進歩で日常業務は既に変わってしまったとの声が聞かれると、アムステルダムで今週開催された会議トレードテックFXで市場参加者らが述べた。ただ、人工知能(AI)が人間による監視の必要性を完全に排除するという点については懐疑的な声が出ているという。
ノルウェーの政府系ファンド(SWF)、ノリゲス・バンク・インベストメント・マネジメントの為替トレーダー、アラン・マーティン・ルセロ氏は「正直に言おう。少なくともバイサイドの資産運用者に関しては、われわれは今や単なるアルゴリズムのディスクジョッキー(DJ)に成り下がってしまった」と指摘。「当社が現在持つテクノロジーの活用により、取引プロセスの約85%を自動化することも可能な状況だ」と述べた。
ヘッジファンドや資産運用会社、中央銀行がより安価な取引と高い匿名性に引き付けられる中、1日当たり7兆5000億ドル(約1064兆円)規模に上る世界の為替取引では機械による処理がますます増えつつある。
アルゴリズム取引は既に、スポット為替取引の75%超を処理している。ルセロ氏はこれについて、トレーディングデスクを担当する人材の必要性が今後ますます低下し、残った人材は他のスキルを身に付けなければならなくなると述べた。
ルセロ氏は「そうした技術の進展により新しい類いの役割、何でも屋のような役割が生じることになる」とし、「われわれは法律や決済、取引コスト分析、執行などこのビジネスにおける多くの領域で専門家となることが期待される」と述べた。
会議では一方、AIにより人間のトレーダーが完全に不要になるわけではないとする参加者も複数いた。そうした参加者は、何か問題が生じた際に誰が責任を取るのかという疑問を提示した。2019年に起きた円急騰や16年のポンド急落は、アルゴリズムのプログラムが原因とされた。