“元TBSアナ、38歳おひとり様”で地元に出戻った私の後悔「もし戻れたら…」
局アナ時代にはわかっていなかったこと
どの仕事でもそうかもしれませんが、ただひたすら日々の仕事に追われ、「眠すぎる……早く帰りたい……!」と思いながら、足を引きずるようにして出勤し、勤務が終わったら一目散に家に帰って、気づいたら床で寝落ちしている……なんていう生活を繰り返している間は、自分の今の仕事が果たして好きなのかどうか、そして今の自分は幸せなのかどうか、そんなことに思いを馳せる暇もないわけです。 特に早朝の番組をやっていた頃なんて、1分1秒、疲労困憊の中、自分の体を起こし続けさせると言う感覚に精一杯で、アナウンサーという好きな仕事をしながらお給料をいただいているという現実のありがたさが、まったく、まったくわかっていなかったのです。 会社を辞めてしばらくしてからやっと気づいたのは、実は……本当に仕事が好きだったということ。 アナウンサーという仕事は、場合によっては、自分のプライバシーなども週刊誌に暴かれたり、私生活を自ら体を張って削ってまでテレビやラジオへネタを提供したりという、OLなのにかなり特殊な業種と言ってもよいでしょう。そんな生活は自分に向いていないんだ、そもそもアナウンサーなんて、自分にはまったく向いていなかったんだと一時は絶望に近い感情にさいなまれていたこともありました。
退社後、初めて自社以外のラジオ番組を聴いてみたら
ですが、会社を辞めたあと、初めてNHKラジオを聞いたときにやっと気づくことができたんです。それまでの私は自社以外のテレビやラジオを客観的に見たり、聞いたりする余裕すらなかったのですが……。 その時は『すっぴん!』という番組が放送されていて、アナウンサーの藤井彩子さんが番組に出演されていたのをよく覚えています。肩の力の抜け方といったら……とにかく、面白いことを言ってやろうとか、ここを盛り上げなければいけない!とか、私がずっと仕事で思い続けてきたおかしな邪念のようなものを一切感じさせないお仕事ぶりを発揮されていたのです。 ただ純粋にアナウンサーとしての仕事を淡々とこなしながらも、ちょっとした言葉の端々からユーモアが垣間見えて、それが非常に心地良いのです。私はそこで初めて、ああ、アナウンサーの仕事ってこれでよかったんだなぁなんて、やっとわかった気がして。 どうして現役時代にそんなことも気づけなかったんだろうと後悔することもありました。そして今こそ、自分がもしアナウンサーに戻れたら、とてつもなく良い仕事ができる気がする……。そんなふうに厚かましくも思ってしまったり。 すべては無いものねだりだとわかっています。いざ自分がその環境に置かれれば、もうちょっと休みたいだの、プライベートが充実していなくて疲れているだの言い出すに決まっているのです。状況が変化するたびにさまざまなジレンマが浮かんでくるであろうということは、どの職種も一緒だとはわかっています。 でも、体を壊したり、東京での20年の生活を手放し北海道に戻ったりと、経験を積んだ私が今思う事は、本当にアナウンサーという仕事は私にとって愛しくてやまないお仕事だったということ。お恥ずかしい限りですが今さら気づいている私。 一方で退社後の生活もそれは本当に素晴らしいものだったし、どんな経験も私にとってなくてはならないもので、すべてが今の私につながっているということを、当たり前ですが再認識している今日この頃です。