有田工の久保竣聖 コロナ禍に泣いた兄の分も奮闘 選抜高校野球
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第4日の22日、初出場の有田工(佐賀)は国学院久我山(東京)に押し切られた。佐賀県勢22年ぶりの勝利はならなかったが、三塁コーチの久保竣聖(しゅんせい)選手(3年)は、新型コロナウイルス禍で最後の夏を奪われた兄昂大(こうだい)さん(19)への思いを胸に戦った。 【熱戦を写真特集で】国学院久我山vs有田工 3点を追う八回の攻撃。2死一、二塁で6番、上原風雅主将(3年)の打球が三塁線を抜けると、久保選手はコーチスボックスでぐるぐる腕を回した。二塁走者が生還して2―4。あと一歩まで追いすがった。久保選手は出番こそなかったがピンチの場面では伝令も務め、黒衣役として好ゲームに貢献した。 2020年5月、新型コロナの影響で夏の甲子園の中止が決まり、有田工の選手らも落ち込んだ。前年秋の県大会は8強。本気で甲子園を目指していただけに落胆は大きかった。3年生だった昂大さんは「みんな一言も話さなかった」と振り返る。涙に暮れる昂大さんらの姿は、1年生だった久保選手の目に今も焼き付いている。 「人生の本舞台は常に将来に在り。コロナ禍に耐えた誇りを胸に」。学校のグラウンドには当時の3年生部員19人の名を刻んだプレートが掲げられた。「先輩の分まで」と練習に励む部員の中でも、兄を追って入部した久保選手の思いはとりわけ強かった。けがが多くレギュラーには定着していないが、三塁コーチや代打としてチームに尽くす。 この日、プレートは甲子園のベンチに持ち込まれた。「夏の甲子園が中止になった卒業生も少しは報われたかな」。試合後、梅崎信司監督(42)は頰を緩めた。スタンドから弟らを応援した昂大さんは「いい試合だった。(弟には)夏にまた来られるように頑張れ、と言おうと思います」。久保選手は「出番がなく悔しかったが、夏はレギュラーで来てヒットを打ちたい」と飛躍を誓った。【井土映美、浅野翔太郎、白川徹】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。