川内原発 再稼働は結局誰が決めるの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
「誰が」「誰に」同意されればいい?
ここで誰が誰にどう同意されればいいのかという問題が残っています。政権の発言だとどうやら「誰が」は九州電力のようです。2012年6月の福井県大飯原発3・4号機(関西電力所有)の再稼働は最終的に政府が判断しました。安倍政権はこれをしないつもりです。理由は「規制委の独立性に配慮する」から。しかし政府が役割も責任も明言しないならば不安で到底同意できないと反発する声が地元では多くあります。規制委は規制委で「同意」に至るまでのさまざまな対策は自らの範囲外であるとし、そこに不安があったとしても手が出せないから「安全とは言わない」し、そもそも「再稼働の判断にはかかわらない」との立場です。 具体的に「同意」に至るまでの不安とは何でしょうか。規制委の守備範囲外は放射性物質が漏れて被ばくする恐れのある地域の防災対策です。避難計画は原発の半径30キロ圏内の自治体に作成を義務づけていて、それはできているものの規制委も政府も内容が妥当であるかないかの審査をいっさい行っていません。いざとなると鹿児島県の支援も事実上欠かせないはずなのに、県側も及び腰の発言に終始しています。いったん放射性物質が拡散すれば当時の風向きなどで何が起こるかわからないのが福島の教訓でした。放射能が市境や県境を考慮してくれるわけではないですから。
「誰に」に立地自治体以外は入る?
「誰に」も議論があります。鹿児島県知事の見解だと同意が必要なのは県と立地自治体の薩摩川内市の2つ。しかし薩摩川内市以外に30キロ圏があるのは前述の通りだし、そこから立地自治体並みの同意や理解を得るべきだとの主張も根強くあるのです。 火山噴火への備えも心配な点。新基準は地震に関しては「過去40万年間に動いた断層」を調査対象にしているに対し、川内原発の立地には約3万年前に襲いかかった南九州全体を覆った火砕流が届いた形跡があります。南九州の霧島や桜島などは今でも盛んな火山活動をしているのです。九電は前兆をとらえて素早く対応するとし規制委も認めましたが本当にできるのでしょうか。 長い間科学者は何とか大地震や大噴火を「予知」しようと努力してきました。でも現状は無理です。なお火砕流が襲ったら「世界最高水準の厳しさ」の原発もひとたまりもありません。
--------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】