川内原発 再稼働は結局誰が決めるの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
2014年7月、原子力規制委員会は停止している鹿児島県の川内原発1・2号機(九州電力所有)が「新たな規制基準を満たす」としました。この秋にも再稼働される見込みです。ところが田中俊一規制委員会委員長は「安全とは言わない」「再稼働の判断にはかかわらない」「人知を尽くしたとは言い切れない」と不安な発言に終始しています。今回のゴーサインはいったい何まで保証し、再稼働は結局、誰が決めるのでしょうか。
「世界最高水準」の厳しい新基準
新規制基準は福島第一原発事故を受けて安全対策などを強めた、規制委いわく「世界最高水準の厳しさ」です。福島事故以前は考えていなかった深刻な事故(過酷事故)にも対応できるか否かを判断しました。地震や津波の想定も高めとし、電源喪失への備えや格納容器破損の圧力や温度の推定、炉心の損傷や水素爆発への対応など、福島の教訓を基に以前の基準よりは相当厳しく、時に規制委側が九電の主張を「甘い」と退けてはハードルを上げる場面もありました。 ただ、これで絶対安全かというとそういうわけではありません。ざくっといえば「技術的に新基準を満たしたに過ぎない」ということです。規制委自体が新基準を「事故が起きうるという前提」と定義しています。これくらいにしておけば前よりはいいだろうという話。ところが政権は「安全性は規制委に委ねている」とどこか人ごとです。いったいどのような課題が残されているのでしょうか。
残る最大の課題は「地元の同意」
原子力規制委員会が2012年に発足して以後の再稼働までの流れは次の通り。 (1)電力会社(川内ならば九州電力)が安全審査を申請する (2)規制委が審査する (3)審査が通る 川内原発は実質的にここまで来ました。厳密には意見募集(パブリックコメント)を経て決定なのですが、パブリックコメントが反対一色だとしても法的拘束力はありません。原子力規制委員会とは環境省の外局に置かれた国家行政組織法3条に基づく委員会。内閣からの独立性が高く、独自の人事権や予算を組めるも完全な独立機関でないのはいうまでもなく、委員は首相が任命して国会の同意を必要とします。 では今後何が必要でしょうか。少なくとも (4)住民説明会 (5)地元自治体が再稼働に同意 が欠かせません。住民説明会は規制委ら国の担当者が行います。怒号が飛び交っても散会したら手続き終了。よって「地元の同意」こそ残された最大の難関です。