“トールボーイ”と呼ばれたホンダ「シティ」。若者心をGETしたのは背高ノッポの斬新なスタイリングだけではなかった!【歴史に残るクルマと技術047】
●シティと同時にユニークなトランクバイクも発売
シティ発売時には、2輪車と4輪車を持つホンダだからこそできる斬新な試みとして、シティ搭載用のトランクバイク「モトコンポ」も同時に発売された。モトコンポは、“モーターバイク(モト)”とオーディオの“コンポ”を組み合わせた造語であり、持ち運びできるバイクという意味を表している。 ホンダは、シティのトランクに小型バイクを搭載することにより、アウトドアライフの新しい使い勝手を創りだすことをアピールしたのだ。トランクバイクは、シティ搭載用として開発された全長118.5cm、重量42kgの超軽量・コンパクトなバイクで、ハンドルとシート、ステップを折りたたんで箱型ボディに収納でき、その状態でシティの荷室エリアに横倒しで搭載可能だ。 エンジンは、2.5psの2ストロークで最高速度は45km/h。燃料やオイル、バッテリーなどの液洩れ防止の特別な設計がなされている。価格は8万円だったが、大ヒットしたシティに比べると人気はやや低調だった。
●高性能化、低燃費化、オープンモデル化で人気を加速
絶好調のシティだったが、一部の走り好きからはモアパワーという要望が散見された。走りは標準以上のレベルではあったが、早々と翌1982年にはホンダ初の「シティターボ」をラインナップに追加。排気量は1.2Lのままで、ターボと電子制御インジェクションにより、最高出力100ps/最大トルク15.0kgmを発生。その走りは、2Lクラスと同等レベルだった。 さらに翌1983年には、前後フェンダーをプリスター化した通称“ブルドッグ”の「シティターボII」も登場。クラス初のインタークーラー付ターボは、最高出力110ps/最大トルク16.3kgmまでパワーアップ、多くの走り屋を魅了し、シティの人気は絶頂に達した。 高出力化に続いたのが、1984年に追加されたソフトトップを装着した国産乗用車初の4シーターフルオープン「シティ・カブリオレ」だ。ソフトトップは手動開閉式で、持ち上げながら後方に押し戻せば簡単にフルオープンに変身できる。さらに、できるだけ多くのユーザーの好みに応えるために、当時流行っていたパステルカラーの12色のボディ色も用意され、若者の憧れの的になった。 また、燃費についても1985年に「シティEIIIタイプ」を投入。シティEIIIは、量産車初のFRM(Fiber Reinforced Metal:繊維強化金属)コンロッドや独自開発の混合気制御などを組み込み、25.0km/L(10モード)のクラストップの燃費を達成した。 このようにして、シティは斬新なスタイリングだけでなく、優れた走りと低燃費もアピールすることに成功したのだ。