女子高生殺人の証拠は「脅迫状」、でも逮捕された男性は文字が書けない…犯人と決めつけた捜査は「被差別部落の出身」だからか 無実を約60年訴える「狭山事件」
逮捕時に働いていた養豚場は、被差別部落出身者が経営していた。警察は、この養豚場を集中的に捜査したとされる。 黒川さんの著書によると、当時の報道では、石川さんの自宅周辺が「犯罪の温床」として扱われた。「犯人はあの区域」との住民の証言も紹介されていた。 ▽石川さんの人権の問題と考えて 事件は風化し、「冤罪事件」としての訴えが続いていることを知る人は多くない。 ただ、60年たった今も、被差別部落の関係者が結婚や就職の際に不当な扱いを受けるケースはある。部落への差別意識は根強く残っていると言える。 黒川さんは「部落差別問題と切っても切り離せないイメージがある事件。そのことで、関心や理解が集まりにくい側面もあるのでは」と推測する。 黒川さんは被差別部落に隣接する地域に生まれた。幼いころから大人の差別意識に触れ、大学在学時に研究を始めた。 数年前に石川さんと話す機会があり、「人間、石川一雄を書きたい」と聞き取りを主軸に置いた書籍を企画した。十数回に渡って面会し、生い立ちから近況をまとめた。
面会を重ねるうち黒川さんは「石川さんを知ってもらえれば、冤罪を疑う人はいないだろう」と確信した。若い世代など幅広い世代に伝えようと、岩波書店から「被差別部落に生まれて」を出版した。 「権力が弱者を利用するのは特別なことでも、過去のことでもないと思う。事件を石川さん個人の、人権の問題として捉えてほしい」と訴えた。