がん細胞を狙い撃ち、口腔がんに光免疫療法を導入 鹿児島大学病院が九州初 保険適用、侵襲性少なく
薬と光を用いて、がん細胞だけを狙い撃ちする頭頸部(けいぶ)アルミノックス治療(光免疫療法)による口腔がん治療が鹿児島大学病院(鹿児島市)で始まった。昨年から口腔外科領域に導入されており、実施するのは九州で初めて。 【写真】〈関連〉口腔がんの新たな治療法として始まった光免疫療法。特殊な光を当てるとがん細胞に付いた薬が反応する=鹿児島市の鹿児島大学
光免疫療法は、光に反応する色素を付けた抗がん剤を使う。投与すると患者のがん細胞にくっつき、光の照射で活性化してそこだけを壊す。県内では、鹿児島医療センター(同市)の耳鼻咽喉科が、頭頸部がんの治療に2023年2月から提供している。 鹿大大学院医歯学総合研究科の奥井達雄教授(44)=口腔外科=によると、口腔がん治療の基本は手術。再発した人や再発リスクの高い人に対しては、放射線治療や抗がん剤を使った化学療法、免疫療法がある。光免疫療法はそれらに続く治療法だ。 光ファイバーを通じて特殊な光を当てる照射は1回5分で、4カ所同時に実施できる。副作用で患部周辺が腫れる場合があるため、現在は気管切開が必要となる。 ガイドラインに基づき、現状では既存の治療が難しい人が適用対象で、専門医による検討委員会が認可する。1回約400万円だが、高額療養費制度が適用される。 県内1例目の治療は10月18日、70代の女性患者に実施。難治性の口腔多発がんで手術や抗がん剤治療を重ねており、新たな治療に望みをつなぐ。奥井教授は「患者の生命を守る武器が一つ増えた。症例を重ねていけば、手術の回避や侵襲性の少ない治療として広がっていくのではないか」と期待する。
南日本新聞 | 鹿児島