研究所、中央にはガラス張り「キッズルーム」 働くママ研究者を増やす、大学の試み
育児中に研究補助者を配置する制度も
同研究所ではこうした設備だけでなく、ジェンダー平等に焦点を当ててダイバーシティへの意識を高めてもらう機会を用意しています。だれもがもっているが気づいていない性別や年齢などに対する無意識のバイアスについての研修会を開催したり、女性研究者のロールモデルとなる人にセミナーで話してもらったりして、女性研究者が働きやすい環境と考え方を整えています。 名古屋大学では、さまざまな女性研究者支援制度を設けており、各々の状況や必要に応じて活用できます。具体的には、出産や育児・介護などのライフイベント中に研究補助者を一時的に配置する研究支援員制度や、優れた研究者と配偶者の研究者も含めて2人一緒に雇用するデュアルキャリアプログラム制度などが利用できます。また、部局ごとの女性比率目標値を達成したり新たに女性研究者を採用したりした際に奨励金を付与するインセンティブ制度を設け、女性研究者の採用を推し進めています。 女性研究者への支援制度は、大学や研究所ごとの枠にとどまりません。同研究所の博士研究員の中川彩美さんは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究員として採用されており、JSTの出産・子育て・介護支援制度を活用しています。 「支給される男女共同参画促進費を使って、時間がない中で効率化を図っています。植物の栽培や変異株作成、顕微鏡観察などのルーティンワークを担ってくれる方を週3日雇ったり、共用でなく自分専用の研究機器を購入して他の研究員と機器を使用する時間が重ならないようにしたりしています。研究所にいる時間がどうしても短くなってしまうので、そこをカバーして研究を進められるのはとてもありがたいです」
子育て中の女性研究者のスケジュール
では、それぞれのライフスタイルや状況に合わせたサポートを受けながら、女性研究者はどのような日常を過ごしているのでしょうか。 前述の八木特任准教授は、主に大学院生の指導にあたっています。普段の1日は画像の通りです。 「学生からするとすごく大変そうに見えて、こんなには頑張れないという気持ちにさせてしまうかもしれません。でも、自分一人で頑張るというよりも、周囲のいろんな人に状況を理解してもらい、助けてもらっています」 学会での発表や研究会も頻繁にあります。遠方で開催されることも多く、子連れで参加せざるをえない場合は、やはり大変です。さらに学会や会議などによってサポートはまちまちで、子どもを預ける場所やシッターを個人で手配しないといけないこともあります。それらの費用に対して金銭的な支援があったとしても、申請のために必要な見積書や請求書などの書類をそろえる手間と時間が発生し負担になることもあります。 「学会や会議などで、たとえ利用者が少なくても託児所やシッターの手配など、子育て中の研究者でも参加しやすい環境を整えてくれるよう働きかけています。そうでないと、子育て中の研究者が参加をあきらめざるをえなくなり、最前線の情報を得る機会や共同研究のチャンスを失いかねないからです」