行間から「大人の事情」を読み解く?『四季報オンライン』人気コラムニストが実践する『四季報』活用術
藤川さん自身、そうした読み方ができるようになってから、株式投資の成績が大きく向上したという。それが、何度も大きな下落相場に見舞われながらも、株式投資をスタートした’09年以降、一度も年間損益でマイナスになったことがないという実績につながっている。 ◆『四季報』は続けて読むことに意義がある ただ、ここまで読み込むには、相当の時間と根気が必要になるのではないだろうか。 「絶対に儲かる株を見つけてやる! といった感じで、思い詰めて読むとかえって挫折しやすくなります。肩の力を抜いて、気楽に眺めるくらいのほうが長続きすると思います。 四季報は年4回刊行されていますが、よく、6月発売の夏号だけ買うという人がいます。上場企業の約7割を占める3月期決算企業の本決算後の最初の号なので、前期の実績と当期および来期の予想が新しくなるからです。実際、夏号の売上が最も多いそうです。 でも、年1回だけというのはもったいない。四季報は続けて読むことで価値が上がるからです。 株式投資にとって重要なのは業績予想の変化であり、それを追うには続けて読む必要があります。さきほど紹介した記事欄に込めた記者の意図が、次号や次々号でわかるということも珍しくありません。そこまでいけば、読むことが楽しくなってくるでしょう」 ◆ビギナーでも簡単にマネができる「月足ぴょこ」銘柄の発掘 四季報ビギナーに向けて、もう1つ、実践しやすい読み方を挙げてもらった。各ページの最上段に企業の月足の株価チャートが掲載されている。その株価チャートだけを、ザッとチェックするという手法だ。 「株価が下がっていて陰線が続いていた、あるいは、ずっと横ばいの状態になっていた企業の中に、最後の月足だけが陽線になっているものがあります。 いちばん最後の月だけ、月初よりも月末の株価のほうが高かったわけです。 私の経験則では、最後の月足がぴょこっと陽線になっている〝月足ぴょこ〟は、上昇相場の合図になっていることが多いんです」 藤川さんは、四季報をパラパラとめくって、〝月足ぴょこ〟を発見したら、記事欄や業績を確認して、投資対象としてキープする。 ◆お宝銘柄が眠っているのは実は「秋号」 また、夏号が最も売れるのに対して、その反動なのだろうか、9月発売の秋号が最も売れないという。しかし、藤川さんは、株式投資に最も役立つのは秋号だとアピールする。 「秋号は、3月期決算企業の第1四半期である4‐6月期の決算が判明した後のタイミングで刊行されます。 実は、この第1四半期の決算というのは大事で、ここで業績を上方修正してきた企業というのは、通期でも上方修正される可能性が高いのです。 スタートダッシュに成功した企業は、年間を通じてそのまま順調に走り続けられるわけです。そうした、業績がまだ株価に反映されていない企業を見つけやすいのが秋号なのです」 四季報の特色のひとつに、全上場銘柄をカバーしていることがある。ニュースとして取り上げられることが少ない企業の業績についても、担当記者が予想をしている。 「普段なら、知る機会がない企業を知ることができるのも、四季報の魅力です」 ■お宝銘柄が眠っているという「秋号」から、藤川さんに注目銘柄を3つピックアップしてもらった。その詳しい解説は有料版【FRIDAYサブスク】でお読みいただけます。 取材・文:松岡賢治 マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。
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