『海のはじまり』第5話 “髪を梳く”という何気ない表現に込められた、多様な意味
年齢も境遇も生死も飛び越えた、シスターフッド
第5話のハイライトはやはり、夏が自分の家族に子供がいることを告白するシーンだろう。昔の交際相手の妊娠を聞かされていなかったゆき子は、心配かけたくなかったと絞り出すような声で打ち明ける夏に、「心配かけると思ったんじゃないでしょ?隠せるって思ったのよ」と、彼の心の内を見透かした指摘をする。 子供を産む、産まないについて断罪している訳ではない。それはひとりひとりに与えられた権利だ。そうではなく、その事実を「隠した」ことがどういうことなのかを、ゆき子は静かに、でもきっぱりとした口調で語りかける。「(男性は)体が傷つくこともないし、悪意はなかったんだろうけど、でもそういう意味なの」と。ひょっとしたら、水季の境遇を身をもって理解している人物は、彼女なのかもしれない。 水季、弥生、朱音による<女性たちの連帯>に、新しくゆき子も加わった。年齢も境遇も生死も飛び越えた、シスターフッドがここにある。これまで物語に大きく関与することのなかった彼女だが、今回のエピソードでは実質的な主人公というくらいに存在感を発揮。夏のこれからの<選択>に、ゆき子はより深くコミットしていくことだろう。
竹島 ルイ