松下洸平2ndアルバム「”R&Bが好きなんだな”ということがちゃんとわかるアルバムにしたかった」
松下洸平が2ndアルバム『R&ME』をリリースした。現在放送中のドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ系)で春木椿役を演じている松下。今年は映画『ミステリと言う勿れ』、舞台『闇に咲く花』などの話題作に次々と登場し、2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』(周明役)への出演も決定するなど、俳優としての活躍ぶりはご存じのとおり。その一方で彼は、音楽活動に対する高いモチベーションも維持し続けている。 【写真を見る】アーティストとしても精力的に活動中の松下洸平 「今はとにかく制作を続けることが大事だと思っています。その中で失敗と成功を繰り返しながら音楽を学びたいので。今回のアルバムは当初、ミニアルバムの予定だったんですよ。スケジュール的にフルアルバムは無理そうだねって話していたんですけど、制作していくうちに“フルアルバムにできるかも”と。参加してくれたプロデューサー、ビートメイカーの皆さんに感謝です」 ■もっと深いところまでタッチできた印象は確かにあります 前作『POINT TO POINT』に引き続き、ニューアルバム『R&ME』にはUTA、Mori Zentaro、Michael Kanekoなどが参加。日本のR&Bシーンを代表するクリエイターとのセッションによって松下は、自らの音楽性をさらに深く追求できたという。 「前作を制作していた頃は、ビートメイカーの方々と曲をつくること自体に慣れていなかったし、手探りな部分もあって。もちろん“やりたいことをやれた”という手応えはあったんですけど、今回はもっと深いところまでタッチできた印象は確かにありますね。自分がやりたいことも明確だったんですよ。例えば、「漂流」はESME MORIさんに作詞・作曲・編曲をすべてお任せしているんですけど、ESMEさんのつくるサウンドのエネルギー、歌詞における言葉のチョイスを信頼しているからこそ、ESMEさんが自由に表現した楽曲を歌ってみたくて」 言うまでもなく、松下自身が作詞・作曲を手掛けた楽曲も本作の大きな魅力だ。「You&Me」(作詞:松下洸平/作曲:松下洸平、UTA)は憂いを帯びたメロディとともに切ない恋愛の情景を描いたR&B系バラード。情感豊かなボーカルにも強く惹きつけられる。 「「You&Me」はUTAさんのスタジオでセッションしながらつくりました。UTAさんが『めちゃくちゃメロウなR&Bを作ろうよ』と言ってくれて、『こんな感じはどう?』と話しながらビートを打ち込んだりピアノを弾いてくださって、横でそれを聴きながら思いついたメロディを録っていって。4~5時間くらいでデモ音源ができたんですけど、そのスピードの速さにもビックリしました。歌詞はトラックやメロディから引き出されたところが大きいですね。UTAさんが雨の音を入れてくれていたし、切ないラブソングが似合いそうだなと」 ■心の中ではメラメラ燃えるものもあったり、頑固な部分があったりもする 松下の音楽的盟友とも言えるギタリストのカンノケンタロウが編曲を担当した「FLYFLY」(作詞・作曲:松下洸平)は「ライブを意識して制作しました」(松下)というアッパーチューン。“どうすべきかよりどうしたいかを/選べる自分でいたいな”など、ストレートな思いを込めた歌詞も聴きどころだ。 「「FLYFLY」はライブで一緒に歌える曲、みんなで盛り上がれる曲にしたくて。レゲトン(※レゲエ、ヒップホップなどを融合したラテン音楽)のビートを取り入れたくて、自分でつくったデモをカンノくんに送って、ブラッシュアップしてもらいました。歌詞にはかなり自分の思いが入ってますね。僕はのんびりした性格で、普段はわりとぽわぽわしているんですけど(笑)、心の中ではメラメラ燃えるものもあったり、頑固な部分があったりもする。それを「FLYFLY」に託したところもあります」 アルバムの最後に収められた「たんぽぽ」(作詞・作曲:松下洸平)も強く心に残る。ピアノと歌のシンプルなアレンジ、ノスタルジックな旋律、そして“貴方の花でありたい”という願いを込めた歌詞。この曲を聴けば“アーティスト・松下洸平”の音楽的な成長を実感してもらえるはずだ。 「ピアノと歌だけで成立している曲を入れたくて、ピアニストのハタヤテツヤさんにお願いしました。僕がつくったデモを聴いていただき、コード感などはすべてお任せして。レコーディングでも素晴らしい演奏をしてくださって、“あとは自分がいい歌を歌うだけ”という状況でした。普段はパートごとに分けて歌を録ることが多いんですが、「たんぽぽ」は細かく分けず、ライブに近いような、流れを活かす感じで歌ったので、ブレスの音がそのまま残っていたり、生感を活かした楽曲になっていると思います」 ■根底にR&Bへのリスペクトがあるのはずっと変わらないです アルバムタイトルの『R&ME』の由来はもちろんR&B。幼少期から母親の影響でスティービー・ワンダー、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、デルフォニックスなどに親しんできた松下。1997年にデビューしたディスティニーズ・チャイルドに「言葉にならないような衝撃を受けた」ことをきっかけにR&Bにさらに傾倒したという。その衝撃は今も松下の中に色濃く残っていて、その音楽性にも強い影響を与え続けているのだ。 「どうしてR&Bが好きかと言われると……こればっかりは言葉にならないものなのかなって気はしてますね。気づいたら好きになっていたし、今も惹かれ続けているとしか答えようがないというか。ジャンルに捉われたくないという思いもあるんですが、根底にR&Bへのリスペクトがあるのはずっと変わらないです。僕がシンガーであることを知らない方がたくさんいらっしゃいますし、まだまだ発展途上なんですが、ちょっとずつでも自分の音楽が広まってほしいという思いもあって。今回の『R&ME』は、“松下洸平はR&Bが好きなんだな”ということがちゃんとわかるアルバムにしたかったんです」 2024年1月からはアルバム『R&ME』を携えた全国ツアー“KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~”を開催。ライブに対する思いもさらに高まっているようだ。 「お客さんに楽しんでいただくことはもちろん、ステージに上がる僕たちも楽しんでいないとダメだなと思っていて。年末からリハーサルが始まるんですけど、みんなで歌ったり踊ったりしている姿を想像しながら準備したいです。会場も少しずつ大きくなっていますが、ライブのスタイルや演出面をただ派手にすればいいかと言えば、そんなことはないと思うので、ステージでの表現も追求していきたいです。今回のツアーはなるべくお客さんとの距離を縮めて、アットホームなライブにしたいですね」 (撮影/大辻隆広 取材・文/森朋之 ヘアメイク/赤木悠記 スタイリスト/後藤泰治)