真田広之の「1分89ワード」に凝縮された熱く深いスピーチ:エミー賞
スピーチの内容「3つのポイント」
まずは内容について、以下の3つのポイントで構成されたスピーチであった。 1. 謙虚さと感謝 真田広之氏はスピーチの冒頭で「Thank you, thank you so much. Oh my goodness.」と、深い感謝の気持ちと驚きを表現している。他の候補者への尊重の気持ちを示し、自身も候補者の1人としてその場にいられたことへの喜びを示した。その謙虚さと受賞に対する率直な感動は、彼の人柄を反映しており、聴衆に強く訴えるものだった。 2. チームとサポートへの感謝 彼は自分を支えてくれたFX、ディズニー、Hulu、そして自身のチームに、「自分を信じてくれてありがとう(believing in me)」と、感謝の意を示している。これにより、成功が個人の力だけではなく、支えてくれる人々やチーム全体の努力によって成り立っていることを強調している。 3. キャストとクルーへの誇り 真田氏は、『SHOGUN』のキャストとクルーに対して強い誇りを表現している。これにより、この彼の受賞は、単なる個人の成果ではなく、映像制作に携わったチーム全体の協力によるものであることを示している。そして、西洋と東洋が尊重しあい、皆が協力しあったからこそ成し得たことだと、自身を取り巻くすべてに感謝を示している。 ■スピーチのテンポとその演出効果 このスピーチが素晴らしかったのは、内容の良さだけではない。真田氏のプレゼンスにもポイントがあった。以下に3点を紹介する。 1. 堂々とした存在感 一般的に英語のスピーチは、1分間に120~150ワードで行われる。120ワードでも聞き手にはゆっくりと感じられると言われているが、真田氏のスピーチはその3/4の89ワードだった。ゆっくりとした話し方は、自信と存在感を強く感じさせる。多くの人が早口で話す傾向がある中で、彼は自分のペースを保ち、言葉を選びながら確信を持ってメッセージを伝えた。これによって静かでありながらも強烈なカリスマ性を放ち、観客の視線を引きつけたのだ。 2. 感情を込めた伝達 スピーチがゆっくり進むことで、言葉の一つひとつに込められた感情が一層際立つ。真田氏は「ありがとう」や「誇りに思う」という感謝の気持ちを丁寧に発音し、言葉に重みをもたせた。この丁寧かつ慎重な話し方によって、彼の感謝の気持ちや感動がより深く伝わり、観客の心に響いた。 3. 迫力の演出 真田氏の話し方は、場の空気をピンと張り、一言一句に観客が集中せざるを得ない雰囲気をつくり出した。この迫力と間(ま)は、彼の演技力とも深く結びついていると考えられる。これにより、力強い印象を与えていた。