阪神・大山は四番として成長しました。もう今や、北関東の星になりましたね【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】
電話番号の通知名を「大山」から「大山さん」に変更しようかと思っています。先日、下妻市の観光大使に就任したという話を聞きました。阪神の四番打者、大山悠輔です。茨城県出身、私の出身県の後輩です。今季は敵の四番打者として戦いました。 【選手データ】大山悠輔 プロフィール・通算成績 最初にあいさつに来てくれたのは新人のころ。神宮球場で大山のほうから「茨城出身です」と。それまでもいいスイングをする打者が阪神に入ったなあ、と思っていたら同郷でした。毎回、あいさつに来てくれる律儀な男で、応援していました。 それが今季は私が巨人の打撃チーフコーチの立場として相対しました。本当に厄介な打者だな、と見ていました。一番素晴らしいところは、すべてのプレーに全力を注ぐところです。まったく力を抜かない。それを143試合、四番として務め上げたのです。 実は、四番の所作をチームメートはつぶさに見ています。まったく手を抜かない四番打者がそこにいる。それだけで後輩の選手だけでなく、先輩にあたる選手までもが、力を抜けなくなります。特に大山は、そこまで口数が多いほうではないので、プレーや日常の振る舞いで、その姿を見せているのだと思いますね。 今季、阪神が優勝したのも、彼を中心にチームがまとまったのではないかと相手側のベンチから感じることが多かったです。こういう四番がいたら、それは強くなるよ、と思っていました。岡本和真も素晴らしい四番打者ですが、打てなくなったときにまだ少し浮足立つ場面がありました。大山はそのような仕草を相手にまったく見せなかった。だからこそ不気味な存在でもあったのです。 日本シリーズ中に、メールを送りました。頑張ってほしいという趣旨の内容です。いつもは丁寧に長い文で返してくれるのですが、このときは短い文でした。「ああ、シリーズに対して究極の集中力を持って臨んでいるな」と感じました。 大山の雰囲気はどこか、西武時代のキヨ(清原和博)に似ています。キヨもそこまで口数が多くない人間でしたが、チームのための打撃をしていた。当時もすごい先輩方ばかりの中で、打線は四番のキヨを中心に回っていました。今季の大山もシーズンを通して、まさにそういう打撃に徹していました。 これだけの四番が出来上がったわけです。彼を中心にいい選手が多い阪神です。常勝チームになっていくのは必然だと思います。少なくとも大山が四番を張り続ける間は、そういう時代になっていくと思います。巨人にとっては、ますます手強い相手になってしまったのではないでしょうか。 本当に茨城の誇りですよ。県民栄誉賞をあげてもいいほどです。西武と巨人時代にコーチとしてお世話になった群馬県出身の宮田征典さんから、冗談で「お前は北関東の恥だ」なんて言われていた私がこう言うのも何ですが、大山は茨城を超えた「北関東の星」になったと思いますね。
週刊ベースボール