返済中の住宅ローン変動金利がついに上昇へ!住信SBIネット銀行、イオン銀行の短プラ引き上げは、他行に波及する?
住信SBIネット銀行、イオン銀行は、2024年5月に短期プライムレート(短プラ)を引き上げると発表した。これは現在、住宅ローン(変動金利)を返済中の金利が上がるということであり、毎月の返済額が増加する。金利引き上げの影響を試算するとともに、他銀行へ金利引き上げが波及する可能性についても考察する。 ※編集部注記:4/25にイオン銀行について加筆 大手銀行の10年後の変動金利は0.7%~2.3%と当サイトは試算 目次短プラ上昇で、返済中の変動金利が上昇へ!変動金利は今後上昇するのか返済中の借り手はどうすべきか
短プラ上昇で、返済中の変動金利が上昇へ!
「これを皮切りに、他行も短期プライムローンおよび住宅ローン変動金利の引き上げの検討に入るのでは。金利上昇に向けて、スイッチが入ったかもしれない」(淡河範明・住宅ローンアドバイザー)。 住信SBIネット銀行は、2024年4月17日、円定期預金およびローン金利について、5月1日に改定(引き上げ)すると発表した。日銀の金融政策変更で政策金利が「マイナス0.1%」から「0~0.1%」に引き上げられるなど、金利は上昇局面にあることが背景だ。 円定期預金金利については、1年物について年0.03%から、年0.10%に引き上げる。実に金利は3倍以上上がる。 同時に、貸し出し金利の基準となる「短期プライムレート」について、年1.675%から、年1.775%に、0.10%引き上げる。 それに連動して、住宅ローン変動金利の基準金利が2.775%から2.875%に、0.1%上昇する。資産形成ローン、不動産担保ローン、目的ローン(教育・自動車・リフォーム・多目的・フリーローン)も同様に0.1%上昇する。 また4月25日、今度はイオン銀行が、住宅ローン変動金利の基準金利を2.370%から2.470%に、0.1%引き上げる発表した。 *短期プライムレート:銀行が大企業などに対して行う1年以内・短期融資の最優遇金利のことで、市場金利に左右される。現在、銀行が提示している短期プライムレートの最頻値は1.475%。 2025年1月から変動金利上昇の可能性 なお、「住宅ローン変動金利」の決まり方は複雑だ。以下、住信SBIネット銀行の変動金利の決まり方を説明する。今回の場合、2024年4月30日までに借り入れた利用者の場合、2025年1月から変動金利が上昇する可能性がある。 まず、銀行が短期プライムレートを引き上げた場合、多くの銀行はそれに連動して住宅ローン変動金利の基準金利を引き上げる。 ただし、現在返済している人にはすぐに適用されるわけではない。「基準金利が改定される」のは、4月1日と10月1日の年2回だけ。その際に短期プライムレートが上がったままであれば、基準金利が改定される。さらに、借入金利が本当に引き上げられる「借入金利の改定日」は3カ月後となる。そのため、2024年5月に基準金利が引き上げられても、実際の金利が上昇するのは、2025年の1月なのだ。つまり、10月1日に金利がもとにもどっていれば、金利は変わらないことになる。 イオン銀行については、5月1日が基準日のためすぐに変更され、返済している人の金利が変更になるのは7月1日からとなる。 激変緩和措置で、返済額が上昇するのはもっと先 また、毎月の返済額については、激変緩和措置として、「5年ルール」「125%ルール」を適用する銀行が多い。住信SBIネット銀行、イオン銀行は、どちらも適用となる。 2025年1月から新しい借入利率が適用され、その金利で計算された返済額が適用されるのだが、毎月返済額を引き上げるのは5年に一回までとしている銀行が多い。つまり、ずっと変動金利で借りた場合であれば、返済額が変わるのは、5年目、10年目、15年目…に限られる。 さらに返済額の上げ幅については、+25%までしか引き上げない。本来はそれ以上の返済が必要であっても、+25%を上限とする。金利については必ず支払わないといけないため、住宅ローン元本の返済は少なくなる。本来払うべき元本返済は、先送りすることになる。ともあれ、返済額が上昇するのは、1年後から5年後になる。※参考:住信SBIネット銀行「住宅ローン金利変動リスク等に関する説明書」 返済額はいくら上がるのか試算 それでは、金利上昇で返済額がどのくらい増加するのか試算してみよう。 前提条件は、借入期間30年、借入残高5000万円。5年ルール等は適用なしで試算した。 金利0.298%の毎月返済額 145,206円 金利0.398%の毎月返済額 147,368円 以上のように、毎月返済額は2,162円増加する。一見、それほど大きな負担には見えない。 次に、30年間の総返済額をシミュレーションしてみた。 金利0.298%の総返済額 5,227万円 金利0.398%の総返済額 5,305万円 以上のように、総返済額は78万円増加する。思ったよりも大きな負担と感じるだろう。 今回、日銀の金融政策変更により政策金利がマイナス0.1%から、0~0.1%に引き上げられたため、短期プライムレートを0.1%引き上げたのだろう。今後、短期プライムレートをさらに引き上げることになれば、返済額も増加していく。