今年の紅白歌合戦の「テーマ」にはメッセージが隠されていた…視聴率低下に悩むNHKの打開策
「世代の壁」を超えるコンテンツの可能性
大手シンクタンク「日本総研」は、今年一年の出生数は70万人を下回ると推計した。 加速する少子化を前に、過去の成功の法則を真似してもだんだんと再現されなくなってきた。音楽業界は「若者狙い」から別の戦略に舵を切る必要があるのかもしれない。 「そこで、『世代の壁を超えた人気』が重要な意味を持ってくると感じます。“若者“に加えて、“その親”という、少なくとも2つの世代の需要をカバーできる楽曲やアーティスト、音楽イベントなどに注力することに、一定の合理性が生まれるわけです。親子で楽曲のよさを共有してくれたり、ファンになって一緒にコンサートに来てくれたりすればプラスの影響があると考えられます。 特に、いわゆる推し活などにおけるグッズ購入、遠隔地のコンサート会場への遠征など、ファンがアーティストを応援するにあたってかかってくるそれなりの金額の費用を親が負担してくれることがあれば、『若者』にとっても、『頼られる親』にとっても、『集客を増やしたいアーティスト』にとっても、『三方よし』のような状況が生まれるかもしれません。 若者人口がじりじり減り続ける日本では、『世代の壁』を超えることが大事になってるように思えます。このように超えるべき“壁“は他にもあって、『性別の壁』『国境の壁』があるでしょう。年齢やジェンダー、国境を超えてファンを増やすことができれば、難しい局面をいくらか好転させることができるかもしれません」
今年の紅白の出場者はどうなる?
年末年始は家族集まって、ゆっくり音楽を聴く。 紅白歌合戦の視聴率低下が叫ばれるが、それでも30%を超える高い数字は保たれている。このような歌番組が、世代の「壁」を超えるコンテンツとしての役割を果たしているのではないか。 「データ分析を通じて、少なくとも結果的にはそのような役割を果たしているように思えます。そろそろ今年の紅白の出場者が発表する時期だと思いますが、『今年のヒットチャートにチャートインしていないアーティスト』が入っているとすれば、そこには今回お話ししたような、ある種の理にかなった背景もあるということになるかもしれません」 また、今年の紅白のテーマ「あなたへの歌」もそれを示しているという。 「公式サイトには『メジャーもマイナーも、国も性別も、時代にとらわれることなく〈中略〉ひとりひとりに最高の歌をおくります!』と明記されています。もうすぐ発表される出場歌手の中には、今年のヒットチャートには登場していないアーティストが一定数含まれるかもしれません。 例えば今年Netflix制作の実写ドラマとして配信され国内外で人気を博した『シティーハンター』の主題歌「Get Wild」(オリジナルは1987年リリース)を歌ったTM NETWORKなど、あらゆる背景をもつ人に届く歌、アーティストもその一人かもしれない。 「今日お話したような80-90年代の楽曲に合致するかもしれません。同曲はSNS上でも、仕事終わりに聴きながら帰途につくことで『いい仕事をしたな…』という気分になる『Get Wild退勤』が話題になりましたね。 これからのポピュラー音楽にとって、日本の少子化や人口構造の変化は重要な環境変化ですが、親世代に限らず多様な世代と若者が共に楽しめる、データに基づいたコンテンツやイベントには、新しい楽しみの出現や、市場の広がり、文化の共有や継承といった様々な可能性が秘められているように思えます。これからも日本の音楽コンテンツが、どんな新しい未来像を描いてくれるのか、年末も目が離せません」
徒然研究室(仮称)、現代ビジネス編集部