左利きなのに右投げ右打ち 龍谷大平安・異色の6割打者 センバツ
野球の打者は、一般的に左打ちが有利とされる。右利きを左打ちに矯正する選手も多いが、開催中の第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)に21日、左利きながら右投げ右打ちという異色の遊撃手が登場した。全国最多42回目の出場となる龍谷大平安(京都)の山口翔梧主将(3年)で、2022年秋の公式戦でチーム一の打率6割1分5厘をマークした。この日は相手投手にタイミングが合わなかったが、チームは初戦を突破した。 打者は右打者より左打者の方が一塁に近い上、振り抜いた体勢のまま走り出せる。さらに、右投手のボールの出所が見やすいため、左打者が有利とされる。 山口選手によると4歳の頃、野球好きの父親から「投手以外だとポジションが一塁と外野に限られるから」という理由で右投げを教わった。左投げだと一塁に送球する際に体を反転させる必要があるため、他の内野手は通常、右投げだ。そのため、小学校で野球を本格的に始めた時から指導を受けて右投げになった。 打つ方は最初から右だった。自分でもはっきりした理由は分からないが、最初から右の方が打ちやすかったという。山口選手は「どちらが有利とか、変えようとかは考えなかった」と自然体を強調する。 昨秋はけがもあって先発出場は7試合だったが、26打数16安打、1本塁打12打点と打ちまくり、難しい遊撃の守備も無失策で乗り切った。箸やペンを持つのは今も左。「利き手にはめているので、感覚的にグラブさばきにいい影響があるように思う」と話す。 大応援団が詰めかけたこの日のセンバツ初戦は4打数無安打、さらに公式戦初の三振を喫するなど本来の打撃ではなかったが、再三の好守で勝利に貢献した。試合後、打撃について「ボールがしっかり見えていなかった。頑張ります」と、次戦を見据えた。 強打者は右投げ左打ちが多いとされるが、左利きで右投げ右打ちの選手では、龍谷大平安OBで13、17年のWBC日本代表の楽天・炭谷銀仁朗捕手(35)がいる。炭谷選手を育てた同校の原田英彦監督(62)は「銀仁朗は小学生時代は水泳選手でもあったので左右の筋肉バランスがよくなり、自然な流れで右投げ右打ちになった」として、「野球選手はバランスが大事。利き手がどちらであっても左右均等に鍛えて、選手が自分の得意な方でプレーすればいい」と話している。【矢倉健次】