『ウィッチャー4』国内独占インタビュー。主人公をシリに変更した意図、ゲラルトは登場するのか、前作からの進化についてなど、気になることを直撃
2024年12月13日(金)ロサンゼルスで行われた、コンピューターゲームの功績を讃える式典であるThe Game Awards。同式典内で、CD PROJEKT REDはオープンワールドのシングルプレイRPG『ウィッチャーIV』(ウィッチャー4)を発表した。 【記事の画像(8枚)を見る】 これまで『ウィッチャー』シリーズの新作“Polaris”と呼ばれたプロジェクトが正式発表された形だ。主人公を、これまでのゲラルトから彼の養女であるシリに変更し、『ウィッチャー』の新章が描かれるという。 本稿では、そんな『ウィッチャーIV』のゲームディレクターを務めるセバスチャン・カレンバ氏、ナラティブディレクターを務めるフィリップ・ヴェーバー氏のふたりに国内メディア独占となるインタビューを実施。主人公をシリに変更した理由や、トレーラーに盛り込まれた情報から出る疑問点などを聞いた。 Sebastian Kalemba氏(セバスチャン・カレンバ): 『ウィッチャーIV』とシリーズ新章のゲームディレクターであり、CD PROJEKT REDにて400名を超える開発チームを率いる責任者。制作ビジョン、ナラティブ、ゲームプレイなど、あらゆる要素を監督している。『サイバーパンク2077』にはヘッド・オブ・アニメーションおよびアニメーション・ディレクターとして参加。『ウィッチャー3 ワイルドハント』の開発中に、リードアニメーターとして入社。(文中はセバスチャン) Philipp Weber氏(フィリップ・ヴェーバー): 『ウィッチャーIV』のナラティブディレクター。シリーズの新章に向けて、没入感に満ち、道徳を揺さぶる複雑なナラティブを創作すべく、ストーリーテリングチームを率いる。過去にはリードクエストデザイナーおよびディレクターを経験しており、『サイバーパンク2077』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』と同作らの拡張パックではクエストデザイナーとして参加。説得力があり、複数のレイヤーを持つストーリーテリングに重点を置いたクエストを作成。CD PROJEKT RED主催『ウィッチャー2 王の暗殺者』MODコンテストで自作MOD“Lykaon”が入賞したことをきっかけに入社。(文中はフィリップ) 現在開発チーム全体で全力投球中の『ウィッチャー』シリーズ最新作 ――主人公はウィッチャーとなったシリとのことですが、時間軸としては前作『ウィッチャー3』のウィッチャーエンド後という解釈でよろしいのでしょうか。: フィリップ :時系列として見た場合は、間違いなく前作 『ウィッチャー3』の数年後を描くものになっています。とはいえ、実際に何年後であるのかという部分に関しては、残念ながら詳細をお話しすることはできません。 また、どのエンディング後かという点についても詳しくお話することはできないのですが、プレイヤーの皆さんは、『ウィッチャー3』でさまざまなエンディングを体験されており、そのすべてにリスペクトを払いたいと考えています。今回のトレーラーで描かれている内容も、『ウィッチャーIV』で語られる物語の一部ではありますが、実際に前作のどのエンディングを引き継いでいるかについて、あるいはそもそも前作のエンディングのいずれかを引き継ぐのかについては、現段階ではお話しできません。とはいえ今後きちんとした形でお伝えできればと考えています。 ――『ウィッチャーIV』の主人公はシリということで、これまで主人公を担ってきたゲラルトの存在も気になります。彼はどうなったのか、また、『IV』に登場はするのでしょうか。 セバスチャン :まず大前提としてお話しておきますが、ゲラルトは 『ウィッチャーIV』にも登場します。我々としても、これまでの3部作の主人公を担ってきたゲラルトは、とても愛すべき存在です。 ファンの皆さんが最後にゲラルトを目にしたのは、弊社が公開している『ウィッチャー』シリーズ10周年記念トレーラーだと思います。ゲラルトが、アナリエッタから譲り受けたトゥサンの邸宅へ旧友たちを招待する様子が見て取れましたが、現段階で言えることは、恐らく彼はそこで何年かを過ごしたのだろうというところですね。その後に何があったのかは、ぜひ『ウィッチャーIV』で体験していただければと。 ――そもそも、シリを主人公に据えたのはなぜなのでしょうか。彼女を主人公にする場合、スピンオフやリブート作品にするという選択肢もあったと思うのですが、ナンバリング作品の主人公に据えた理由をお聞きしたいです。 フィリップ :ゲラルトからシリに変えたのは、我々としては至極当然の流れでした。 『ウィッチャー3』のエキスパンション『血塗られた美酒』にて、我々の中でゲラルトの物語は一旦終わりを迎えたという認識です。そしてそれにリスペクトを払いつつ、つねにシリーズのメインキャラクターであり続けたシリの冒険も描きたいなと考えました。 原作小説でも、シリは第2の主人公という扱いを受けてきている存在なので、とても興味深い人物であると同時に、彼女の過去や特殊な能力も、RPGの主人公としてとても適切なのではないかと。 『ウィッチャー3』でも、シリはウィッチャーとしての役割を果たすような描写があったと思うのですが、『ウィッチャーIV』ではそこをもっとクローズアップして、正真正銘のウィッチャーになる過程を描きたいと考え、主人公に据えようという決断に至りました。 また、つねに中立を重んじるゲラルトとは違い、シリはまだ若いということもあってかなり直情的な性格をしています。完成されたウィッチャーとは対照的な未熟なウィッチャーを描きたかったのも理由のひとつですね。 あと、なぜナンバリングにしたのかというと、やはり『ウィッチャー3』と地続きの話であるからこそ、というのがいちばんの理由ですね。そして、今回がシリの冒険として新たな『ウィッチャー』の物語であるからこそ、リブートでもスピンオフでもないナンバリング作品として出したいなと。 さらに、初代『ウィッチャー』がそうであったように、今回はサブタイトルをつけることはしませんでした。原作小説やシリーズ作品をまったく知らない方々にとって、本作を『ウィッチャー』の世界に入るための新たな入り口として見てもらいたいという考えもありますし、シリーズファンにとっても継続して楽しめるように……など、本当にさまざまな理由から、今回正式なナンバリング作品として発表させていただいております。 ――トレーラーでは、シリが霊薬や印などを使用している姿が見られました。彼女は草の試練を受けたということでしょうか。 フィリップ :今回 『ウィッチャーIV』で描かれるのは、シリが真のウィッチャーになっていく物語になります。 そして何がウィッチャーたらしめるのか……そういった要素は、ゲーム内でもロア(※舞台設定や歴史、伝承、人物の来歴といった世界設定のこと)として語られてはいますが、そのあたりに関しては、開発チーム全体で綿密かつ合理的に解説ができるように構築しています。 トレーラーでは、ウィッチャーの印以外にも、シリが魔法のような新しい力を使っているのに気付いた方もいると思いますが、このような“源流”(※)としてのシリの力と、霊薬を飲んで戦いに備えるウィッチャー特有の力を融合した状態のものを描いていきたいと考えています。 ※げんりゅう。シリは強大な魔力を持つため、そう呼称されている。 ――トレーラーのラストは、シリーズ特有の苦々しい結末が見られ、とても『ウィッチャー』らしいと感じました。本編でもそういった“ならでは”の展開があると期待していいのでしょうか。 セバスチャン :トレーラーで見られたようなシーン、及びストーリー展開は、 『ウィッチャーIV』でももちろんあります。『ウィッチャー』ならではの陰鬱で容赦のない世界をお見せするために、今回はこのようなトレーラーを公開させていただきました。 ただ、そういった暗い雰囲気の世界の中に、ひと筋の光や希望が見えるところも『ウィッチャー』が持つDNAとして重要であると考えます。ですから、『ウィッチャーIV』も、プレイヤーの選択次第では、トレーラーでお見せした結末以外の物語を体験できるので、ぜひ楽しみにしていてください。 ――『ウィッチャーIV』では、日本語を含めた複数の言語で前作からシリの声優変更が発表されています。変更することにした意図などを教えていただけますか? セバスチャン :今回で物語は新章を迎え、今後はシリを主人公に据えた新たな三部作を制作しようと考えています。 前作の発売からは10年近く経過しているという点が大きいですが、今後シリの物語をお伝えしていくには、長い時間が必要となります。さらにゲラルトよりも若い主人公であるシリによる新たな冒険を描くなど、いろいろな要素(※)を鑑みて、複数言語での声優変更という決断になりました。 ※通訳として同席していたCD PROJEKT RED日本チームによると、キャスト変更の理由は国ごとに異なり、日本語においては日本語版特有のさまざまな事情をかんがみて、変更に至ったとのこと また、これは英語版のお話なのですが、1年以上キャスト選考を行ってきて、キアラ・バークリーさんという女優さんが我々の描きたいシリ像にぴったりはまったという経緯があります。 ――本作もオープンワールドでのシングルプレイRPGとのことですが、どういった地域を冒険することになるのでしょうか。 フィリップ :まず 『ウィッチャー』シリーズが、シングルプレイRPGであることが、我々にとって非常に重要なことになります。CD PROJEKT REDでは、私たち自身がプレイしたいと思う作品を開発するのが、会社の理念にもなっております。ですから、今回もシングルプレイRPGを制作するに至りました。 トレーラーでシリが訪れていた場所は、シュトロームフォードという、かなり北にある辺鄙な村です。ご覧いただいたように雪も積もっていて、とても寒い地域ですが、現段階では『ウィッチャーIV』の世界のどこにあの村があるのかはお話できません。 ただ、オープンワールドのRPG作品である以上、今回もプレイヤーの皆さんが楽しんで探索できるような世界にしたいと考えています。 ――前作『ウィッチャー3』は、PS5とXbox Series X/S向けのアップデートが行われ現行機に最適化したものが楽しめるようになっていますが、ゲームシステムは2015年のオリジナル版から大きな変化はありません。前作の発売から約10年が経過して、ハードの性能的にもできることが大幅に増えていると思いますが、ゲームシステム面の進化も期待していいのでしょうか? フィリップ :CD PROJEKT REDでは技術の最先端であり続けたいという考えが、 『ウィッチャー2』のころからほぼ伝統のように社内に浸透しています。 『ウィッチャーIV』では、Epic Gamesと正式にパートナーシップ契約を結び、Unreal Engine(アンリアルエンジン)5をオープンワールドRPG用にカスタマイズしたうえで開発を行っております。 私たちはつねに野心的でありたいと考えており、私自身はナラティブ面でそこにチャレンジしていますが、エンジニアたちは最新技術やシステムを存分に活かし、技術面でチャレンジし続けています。 ただし、現段階でどのような、そしてどの程度のパフォーマンスを発揮できるかは詳細に語ることは難しいですね。 セバスチャン :ひとつ付け加えるとすれば、トレーラー映像では、開発中のゲーム内の人物モデルをそのまま使用していますし、あのレベルのシネマティックを実際のゲームでも実現できるように目指していきたいと思っています。 ――アクション、戦闘部分についてお聞きします。本作でも二本の剣や印を用いて戦うことになると思いますが、前作から大きく変化しているところはありますか? セバスチャン :トレーラーでは、シリがまるでゲラルトのような動きで剣を振るって戦っていましたが、あれは偶然ではなく、シリはゲラルト、及び“狼流派”(※)の影響を多大に受けているためです。 ※ウィッチャーの流派。“狼流派”、“グリフィン流派”、“猫流派”など、複数存在する。 メダルは“オオヤマネコ”をモチーフとした彼女独自のものなのですが、鎧は狼流派系統のものになっています。そのあたりも本作のバトルシーンで大いに活かされる要素になってくるでしょう。 もうひとつ重要なのは、シリが源流という強力な存在である点です。トレーラーでも、ウィッチャーの印より強力な魔法を使用しています。彼女は自然の力を引き出して魔法に変換することが可能なので、そこも活かされる要素になると思います。 バトルシーンに関しては、『ウィッチャー3』と『サイバーパンク2077』で得た教訓を活かしたうえで、『ウィッチャーIV』でさらに進化させたいと考えています。ゲームプレイの詳細については、べつの機会に公開していくつもりです。 ――現在の開発状況はいかがでしょうか。現状ではどの部分に注力している、というのはありますか? フィリップ :すでに発表があったとおり、コンセプトを決定する段階であるプリプロが終わり、本プロダクションに移行しました。ゲームを織り成すすべての要素を、開発チーム全体で、全力で取り掛かれる状況になったという感じです。ゲーム開発において、とても楽しい段階なので、チームとしても大いに盛り上がっている段階ですね。 セバスチャン :現在特定の部分に集中しているというよりは、ゲーム全体の開発に対してチームが100%の力を出して取り組んでいる状況と言えます。ぜひ楽しみにしていてください。