「水を飲ませようとすると“甘えさせるな!”」 順天堂大学・レジェンド監督によるパワハラの一部始終 「靭帯損傷し、箱根への挑戦が危うい選手も」
〈仲間や先輩、先生方が暴行を受ける姿を見ている〉
長距離走者としてメキシコ、ミュンヘン両五輪に出場した澤木氏は、指導者として母校・順大を箱根駅伝で9度の総合優勝に導き、教え子には初代「山の神」として名をはせた今井正人氏もいる。その手腕を高く評価され、日本陸連専務理事まで務めた名伯楽だが、順大では“絶対権力者”として君臨していた様子だ。 事件後に学内で出回った〈被害者とその仲間一同〉による告発文を見ると、 〈たくさんの仲間や先輩、若い先生方が殴る、蹴るの暴行を受ける姿をみているため、(中略)走ることしかできませんでした〉 といった調子で、澤木氏の横暴ぶりがつづられている。 同部OBによれば、 「澤木監督は“腹筋に力が入っていない”と言って腹部をグーでパンチしたり、革靴で蹴りを入れたこともある。“でくの坊が”“使えない”など、言葉の圧もしょっちゅうでした」
「大昔からやっていることだから」
駅伝監督やコーチたちも暴言を浴び、学生を守ることはできなかったとか。 現在は同部コーチを務める「山の神」今井氏の携帯に架電すると、 「その件については、お話しできません……」 と口を濁すのだった。 それでは当の澤木氏はどう答えるか。ご本人に自宅前で直撃してみたところ、 「大昔からやっていることだから。大会後、同じ距離を走れば自信をつけられる。そういう意味だった。走る前にパルスオキシメーターで体調を確認し、周回遅れはその場でやめさせなさいと駅伝監督に指示した。給水は暑かったら取らせるけど、あの日は“涼しいからよいだろう”と判断した。だって箱根や予選会も1回しか給水しないよ?」 とはいえ、結果的に複数の部員が倒れたのは事実だ。
「普通はそんなもんだよ。練習というのは」
その点を改めて聞くと、 「私は見ていない。翌日に病院へ行く予定があって終了後に帰ったんや。今、初めて詳細に聞きましたよ。後日、現場から熱中症があったと軽い感じで報告を受けたから、そうかと言って済ませました。普通はそんなもんだよ。練習というのは」 順大本部にも問うと、 「選手の安全管理は、十分な注意の元に行っているところですが、体調不良を訴える選手が出たことは誠に遺憾です。引き続き選手の安全管理を徹底していきます。尚、澤木特任教授からは陸上競技部の指導から退くと申し出がありました」 前回の箱根では総合17位、シード権の獲得すらかなわなかった順大。受け継がれてきた名門の襷(たすき)は再生できるだろうか――。 後編【箱根駅伝の名門で“パワハラ指導”をしたレジェンド総監督の素顔 「“甘えさせるな!”と激高」】では、澤木氏の来歴について詳しく報じている。 「週刊新潮」2024年9月12日号 掲載
新潮社