<生活直撃の危機>日本の物流クラッシュ寸前 !「2024年問題」本格化で一体何が起こるのか?
特効薬ではない「モーダルシフト」
そのような状況を背景として先述の「物流革新緊急パッケージ」でも取り上げられたのが、トラックドライバーの時間外労働を吸収し、トラック輸送能力の不足をカバーする「モーダルシフト」の推進である。モーダルシフトは中長期的には不可欠な対策であることは間違いないが、当面の即効性には議論がある。 実は、鉄道輸送や内航海運のシェアは長期間かけて減少してきている。輸送機関の分担率を重量ベースで見てみると、特に鉄道輸送は1950年時点で26%以上であったものが2019年には1%を切っている。 鉄道貨物輸送にかかわるインフラも縮小してきた。鉄道貨物輸送の車両台数は04年から22年の間だけを見ても、約60%弱まで減少している。重量ベースで90%以上の分担率を有するトラック輸送の負荷軽減のために鉄道輸送にシェアをシフトさせるには、鉄道車両を含むインフラの大幅な拡充が不可欠であるが、それには中長期的に取り組んでいくしかないのである。
それは、鉄道輸送ばかりではなく内航海運についても同様である。貨物輸送機関別分担率は、1960年代後半に鉄道輸送のシェアを抜いて以来、内航海運の分担率は安定してはいるものの、7~8%台の水準にとどまっているのが現実である。コンテナ船〈海上コンテナを専門に運ぶ船で、国際定期航路の主力。貨物船の中で最も高速〉とRORO船が積載できる貨物量は減少とは言えないまでも、横ばい状態である。 内航海運についても、インフラの増強が不可欠なのである。
小売事業者らが実施すべきこととは
冒頭の日本商工会議所による調査では、「2024年問題」の課題として、67.1%の企業が「適切な物流コストの収受」を、49.3%が「消費者の理解(販売価格への送料等の適切な転嫁等)」を挙げており、「お金」を重視する傾向がみてとれる。 もちろん「お金」が重要であることは言うまでもないが、適切な対価の収受がトラック運送事業者の経営状態を改善させ、それがドライバーの賃金上昇につながり、ドライバーの減少を抑えるまでにはしかるべき時間が必要である。やはり当面最も重視すべきはドライバーの負担削減であることは間違いない。 そのように考えた結果として、50%前後の荷主企業が「認識しているが、何をすればいいのかわからない」という結論に至ってしまったのではなかろうか。 その疑問に対する一つの回答としてご紹介したいのが、Wedge ONLINEに筆者が寄稿した「『物流2024年問題』解決策はコストコ日本法人から学べ!」(23年12月7日)である。 コストコ日本法人(以下、コストコ)は、物流センターから各倉庫店への配送にはトラックではなくトレーラーを使用、荷物を積むパレットの規格を統一、ベンダーから物流センターへの納品を事前予約制とし、ドライバーに長時間の手待ちも荷役もさせない仕組みを構築している。 ドライバーの物流センター庫内への立ち入りは禁止されており、貨物の積み込み作業はコストコの社員が行っている。物流センター近郊の倉庫店に実入りトレーラーを輸送してきたドライバーは倉庫店でトレーラーから荷物が入った荷台をそのまま切り離し、空になっている別の荷台をけん引して物流センターに戻る。納品された貨物の積み降ろし作業はコストコ倉庫店の社員が行う。 物流センターから中長距離の倉庫店では、荷台の切り離しは行われず、ドライバーは荷降ろしが完了するまで待機することになるが、同社は各ベンダーに指定のパレットレンタル会社と契約の上、全ての貨物を同じ大きさと形のパレットに搭載することを義務付けている。全ての貨物をパレットに載せたまま配送しているため、長時間の手待ちが発生することはない。 ベンダーから物流センターへの納品については、基本的に10トン車以上のトラックで行われているが、事前予約制により1台の受け付けに要する時間は1~2分で、よほどの繁忙期でない限りゲートでの待ち時間は発生しない。トラックのドライバーも庫内への立ち入りを禁止されている。