もはや人間は不要なのか…?人工知能が急速に発展する時代に考える、AIにはできない「人間だけが持つ能力」
人間はもはや不要なのか…?
AIの登場で我々の生活は飛躍的に便利になりました。英語が出来なくても自動翻訳を使えば海外の人とやり取りが出来ますし、分からないことがあったらChatGPTに聞けば教えてくれる時代です。いずれは車の運転もAIがしてくれるようになるといいます。 【写真】講談社が「漫画の創り方」教えます…新たにスタートする注目の「講座」の中身 便利になること自体は歓迎すべきことなのですが、ここまでなんでもやってくれると人間ってもはやいらないのでは? という気すらしてきます。ゴールドマンサックスが2023年3月に発表したレポートによると将来的には世界で約3億人分の仕事がAIによって代替されるそうです。2021年に講談社にできたばかりの異色の部署「クリエイターズラボ」でも、「AI時代とどう向き合うか?」は大きな課題となっています。 これから容赦なく押し寄せてくるAI時代において、人間でなくては果たせない役割とは何でしょうか? さまざまなものが考えられますが、その中の一つに「自らが考えていることを過不足なく、分かりやすく伝えること」と「伝えられた相手の気持ちを想像すること」があげられます。 たとえばChatGPTを使っていて、「無難な回答だな」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。情報の受け手を驚かせようとか、楽しませようという発想はAIにはありません。そのためAIは上司に企画をプレゼンしたり、部下に指示を伝えたりするのも難しいでしょう。「こう言えば上司は納得するはず」「部下にスムーズに動いてもらうには」といったことを、AIは考えられないのです。 AIがますます存在感を増す時代において、必要なのは人間にしかできない「伝える力」と「想像力」を伸ばすことではないでしょうか。そのために、うってつけの方法は「物語を創る」ことです。
多くの人が「面白い」と感じる作品の共通点
漫画、小説、映画……。世の中には様々なコンテンツ、物語があります。なぜクリエイターと呼ばれる人々は物語を創るのでしょうか? 人によってさまざまな理由がありますが、マンガだけでなくゲームや映画、VRなどの製作者を支援してきた講談社「クリエイターズラボ」としては、ひとつの答えがあるのではないかと考えています。 それは、自分の脳内にある思い=「想像」を伝えたいというものです。だからクリエイターは物語をコンテンツという形で「創造」し、自らの「想像」を乗せるのです。 そして創作はここで終わりではありません。コンテンツに乗せられた「想像」を受け取った相手を面白がらせ、楽しませることまでが創作です。では、どうしたら受け手を楽しませることが出来るのか。 多くの人が「面白い」と感じる作品には共通点があります。楽しんでいるときにその世界にのめりこむことが出来る作品です。 ディズニーランドを思い浮かべるとよくわかるかもしれません。アトラクションやキャストには、来場者を夢の世界へと誘い込むために様々な仕掛けがされています。清掃を担当するキャストがごみを拾うときに「夢のカケラを集めている」と話すのが良い例です。細部までの作りこみが夢の国の素晴らしさなのです。 物語も一緒で、キャラクターの振る舞いに違和感を覚えたり、ストーリーが説明不足(あるいは説明過多)だと感じるとユーザーは十分に集中が出来ません。これはクリエイターが自らの「想像」に上手な形を与えることができていないせいです。 「想像」を他の人にも伝える形にするためには掘り下げることが必要です。なぜこのキャラクターは友達が少ないのか? それは理屈好きで変人だから。ではなぜそんな性格になってしまったのか? それは弁護士と研究者の家庭で育ったから。では家庭ではどんな教育をされていたのか…。 このようにどんどん掘り下げていくことで、脳内にしかなかった「想像」がだんだん具体的になり、より魅力的でかつ作り物感のないキャラクターに近づいていきます。 これら自らの「想像」を伝えるために脳内を掘り下げ、具体的にしていく。そして受け手を幸せにするために伝え方を工夫する。実はこの行為がAIには難しいということを、ITジャーナリストも指摘しています(東洋経済オンライン『話題の「ChatGPT」、そのすごさと″限界"のワケ』)。 AIはネット上に存在する膨大な情報を学習し、答えを出します。それゆえ作者の頭の中にしかない「想像」を掘り下げることは難しいのです。 だからこそ自分の「想像」を、受け手に分かりやすく面白く「伝える力」は人間にしかないものと言えます。 続く記事『絵が描けなくてもOK! 「漫画の創り方」教えます…講談社が仕掛ける、まったく新しい教育サービス『創作の不思議』スタート』では、漫画家志望の方はもちろん、新しいスキルを身につけたい! という中高生を対象に開催される講談社の講座「創作の不思議」について解説しています。
クリエイターズラボ