「腹が減ったぁ、飯を買ってくれ」カトマンズにあふれるストリートチルドレン
ネパールの首都カトマンズにあるダルバール広場。古いチベット仏教建造物の並ぶこの一角は、人気の観光名所でもある。2009年、僕が初めてストリート・チルドレンと遭遇したのがこの広場だった。まだ10歳前後の子供たちが堂々とタバコをふかし、ハイになるためにグルー(接着ボンド)をたらしこんだビニール袋を吸引する姿に驚かされた。 「腹が減ったぁ、飯を買ってくれ」 目が合うと悪びれる様子もなく乞うてきたが、金ではなく飯、というのが切実でもあり、同時に何か滑稽でもあり、僕はそんな彼らに惹かれカメラを向けるようになった。だいたいこの広場界隈で寝起きしていたので、僕は勝手に「ダルバール・ボーイズ」と名付け、昨年までの6年にわたって彼らを追い続けた。
カトマンズとその近郊にはおよそ5000人のストリート・チルドレンがいるといわれる。国内外の多くのNGOが彼らの支援のために活動しているが、子供たちが路上生活から抜け出すことは簡単ではない。仲間たちとの自由気ままな暮らしに慣れてしまった子供たちは、施設での規則正しい生活に馴染めず、すぐ路上に戻ってしまうことになる。 2015年の大地震によって、ダルバール広場の多くの歴史的寺院も崩壊してしまった。もう見晴らしの良い仏塔の上で身を寄せ合って眠る子供たちの姿を見ることもない。青年に成長したダルバール・ボーイズたちも、少年の甘えが許されなくなった今、人生の新たなチャレンジに向き合うことになっていた。 (2010年5月撮影) ※この記事はフォトジャーナル<ネパールのストリートチルドレン>- 高橋邦典 第50回」の一部を抜粋したものです。