標準体型の女性こそ万能の戦士だった!?『プリンセスピーチ Showtime!』で「鬼の副長」と化したピーチを考察する
3月22日発売のNintendo Switch『プリンセスピーチ Showtime!』(以下『プリンセスピーチ』)は、なんとマリオとルイージではなくピーチが悪と戦う内容です。 【画像】今作のピーチ。剣士やカウガール、パティシエ、さらには怪盗まで!? クッパに誘拐されること数知れず。あまりに誘拐に慣れ過ぎているため、取り乱す様子すら見せないピーチが今度は武器を手に取って暴れ回ります。しかも設定は「舞台の上」ということもあり、横スクロールアクションに近い構図です。こ、これはピーチ版ファイナルファイト!? しかしよく考えてみれば、ピーチは体型からして配管工兄弟よりも戦闘向きという見方もできます。 ◆ピーチが大暴れ! 観劇のためにキラメキ劇場を訪れたピーチ。今回はいつもの配管工兄弟はいません。うるさい連中を抜きに、のんびりお芝居見物にしゃれ込むつもりです。 ですが、そんな時にまた別の変な奴らが来るのがマリオシリーズのお約束。グレープ劇団とかいう連中が、劇場を乗っ取っちまいました。 占拠された劇場を取り戻すため、ピーチはいろんな職業の人に変身してグレープ劇団と戦います。剣士、忍者、カウガール、探偵、パティシエ、拳法の達人……。そう、今作ではピーチ自らがどつき合いを繰り広げるんですよ! 実際にプレイしてみると、何で今までこんな女性が簡単にクッパに誘拐されていたんだと首を捻らざるを得ないアクションが繰り広げられます。特に剣士ピーチは、敵の攻撃に合わせてボタンを押すとパリィするという能力が! す、すげぇ! マリオだってこんな動きはしたことないんじゃないか!? ◆小太りのおじさんよりも標準体型のピーチ 「ピーチが誘拐被害者から戦闘の主役になる」のは、単純に「時代の流れ」なのでしょうか? 筆者はこの「時代の流れ」を、「社会学の観点から見た時代」ではなく「スポーツ科学の観点から見た時代」と解釈しています。 コンタクトスポーツに向いているのは身体の大きなゴリマッチョ、という知識は既に過去の話。腹が出ている配管工のオヤジよりも、標準体型のピーチのほうがツブシが利きます。元々細身であれば、フェンシングもカンフーもパルクールもできるはず。しかし、太っているとそうはいきません。 それを示すように、今作でのピーチの「アクションの豊富さ」は驚愕に値するほどのレベル。ステージ毎のゲーム性が全く違います。特に忍者ステージは、ピーチの暗殺者としての能力を目の当たりにすることができます。うひぃ! とにかく、動きのバリエーションはマリオとルイージを凌駕すると言ってもいいでしょう。その源は、やはりピーチの「何にでもなれる体型」ではないかというのが筆者の推論です。 ◆『プリンセスピーチ』は「シリーズの分岐点」か マリオの基本的な動きは、既に全世界の人の知る知識となっています。 走る、ジャンプする、ブロックを叩く、そして踏む。例外はあれど、マリオとルイージの動きは基本的にはその4動作です。 そんな配管工兄弟が牽引する世界に新しい息吹を吹き込むとしたら、それは今作のピーチのような「プレイヤーキャラとしてのイメージがまだ定まっていない、細身の体型のキャラ」ではないでしょうか。 それを鑑みると、今作『プリンセスピーチ』はシリーズにとっての記念碑的作品、もしくは重要な分岐点になるかもしれません。 ◆「誘拐被害者」から「鬼の副長」へ 「すぐに誘拐されるピーチ」はいなくなる代わりに、「マリオと違ったスタイルで戦えるピーチ」が確立し、それに基づいた新作が開発される近未来。今現在生誕した人はZ世代の次のα世代に区分されますが、15年後のα世代のピーチに対するイメージは「戦闘ができる驚異の身体能力の持ち主」になるのではないでしょうか。 創作の世界では、そのような「イメージの大転換」はしばしば発生します。 昭和30年代まで、「新選組ものの幕末時代劇の主役」といえば近藤勇でした。しかし、司馬遼太郎の『燃えよ剣』発表以後は土方歳三に人気が出るようになります。今では「新選組=土方」というイメージを持つ人が大半ではないでしょうか。時代小説作家としての司馬遼太郎はやはり絶大な影響力を発揮した人物で、それまでの時代劇の人気区分だった寛永剣客ものや元禄の水戸黄門漫遊記、同じ元禄の忠臣蔵物語を圧倒する「幕末もの」を商業的に確立してしまいました。 マリオシリーズも『プリンセスピーチ』をきっかけに、「マリオ組に所属する鬼の副長ピーチ」が名を馳せるようになる……と筆者は邪推しています。 ……てか、そうなった場合ルイージの立場がなくなるんじゃ……?
インサイド 澤田 真一
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