資産運用立国に向け、岸田前首相が議連設立 石破政権が厳しさを増す中「再登板論」も
自民党の「資産運用立国議員連盟」が22日、国会内で設立総会を開いた。岸田文雄前首相が呼びかけ人で、岸田政権が掲げた資産運用立国の推進に向けて個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の抜本的な拡充策などを検討する。国民の関心が高い経済政策をアピールして党勢回復につなげる狙いだが、石破茂首相(自民党総裁)の政権運営が厳しさを増す中、岸田氏の「再登板」に向けた布石と捉えられる可能性もある。 ■イデコ拡充提言へ 「資産運用立国の取り組みは日本全体の資金の新しい流れを生み出そうというのが大きな目標だった。資産運用立国の取り組みを引き続き継続するという強い意志を世界に示していかなければならない」 岸田氏は設立総会で、集まった自民議員らに訴えた。会場には、岸田氏の最側近の木原誠二選対委員長や小林史明環境副大臣ら旧岸田派(宏池会)の出身者に加え、岸田氏とは確執がささやかれた茂木敏充前幹事長の姿もあった。 資産運用立国は岸田氏が首相在任時に掲げた看板政策の一つだ。家計の金融資産の半分超を占めるとされる預貯金を投資に回し、国民の所得増につなげるというもので、岸田政権では新しい少額投資非課税制度(NISA)の導入などに取り組んだ。議連は今後、2400万口座に達した新NISAに比べ利用者が少ないiDeCoの拡充策を検討し、政府に提言する。 ■経済政策に危機感 岸田氏が経済政策の発信に積極姿勢をみせるのは、衆院選でインパクトのある経済政策を打ち出せなかった現政権に危機感を抱いているからだ。選挙後も、年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」の見直しを主張する国民民主党が注目を浴び、自民は経済政策でお株を奪われる状況になっている。 首相は党の派閥パーティー収入不記載事件に端を発した「政治とカネ」問題の再発防止策に力を入れるが、岸田氏は周囲に「守りだけではなく、攻めも大事だ」と語る。 9月の自民総裁選では岸田氏が支援に回ったことが首相の勝利の決め手となった。このため、岸田氏はあくまで首相を支える考えを変えてはいない。だが、党内では「再登板論」がくすぶっており、衆目が一致する「ポスト石破」候補も見当たらない中、岸田氏の動向に注目が集まりそうだ。(永原慎吾)