【アーセナル分析コラム】なぜ完敗? 10人は言い訳にすぎない…。サリバ退場以前から起きていた問題
プレミアリーグ第8節ボーンマス対アーセナルが現地時間19日に行われ、0-2でアーセナルは敗れた。前半途中にDFウィリアム・サリバが退場したことで、10人で戦うことを強いられたアウェイチームは今季初黒星を喫することに。野戦病院と化したアーセナルのスカッドは、攻守でさまざまな問題が発生していた。(文:竹内快) 【動画】ボーンマス対アーセナル ハイライト
サリバ退場が試合を動かす
飛車角落ちのレベルではないだろう。 この試合のアーセナルは、右サイドで深刻なクオリティ不足を露呈していた。その原因は、通常は主軸である選手たちがほとんど揃わなかったところにある。 右サイドの崩しの軸であるブカヨ・サカ、マルティン・ウーデゴールに加え、ユリエン・ティンバーと冨安健洋が負傷離脱。出場したとはいえ、右サイドバック(SB)のベン・ホワイトもコンディションが万全とは思えないパフォーマンスだった。 右サイドハーフとして先発したラヒーム・スターリングは、サカのような個の突破はできず、これまでプレミアリーグで10ゴールを奪った「お得意様」の脅威になれず。スコアレスドローの均衡状態が続いていた中で、試合の流れを変えるセンターバック(CB)ウィリアム・サリバの一発退場は起こった。 10人で戦うことになったアーセナルは、37分にスターリングに代えてヤクブ・キヴィオルを投入。ポーランド代表DFは右CBに配置された。 アーセナルの2CBは、右がサリバ、左がガブリエウ・マガリャンイスと順足コンビが一番手だ。右利きのサリバが抜けたのであれば、同じく右利きの選手を入れるのがセオリーだろう。 しかし、アルテタ監督は左利きのキヴィオルを右CBの代理に選んだ。これにより、アーセナルの最終ラインは4枚中3枚が左利きという極めて珍しい顔ぶれとなった。 結果的に、これが10人で戦うことになったこと以上にボーンマスが攻勢を強める原因になる。
狙われたのは「歪な右サイド」
ボーンマスを率いるアンドニ・イラオラ監督は、隙を見逃さなかった。 キヴィオルは左CBと左SBの戦力として数えられており、右CBは経験の少ないポジション。慣れない右サイドでのプレーということもあってポジショニングや周囲の選手との連係面で問題が発生するのは想像に難しくない。 そこで、ボーンマスはアーセナルの右SBホワイトを前に釣り出し、生まれたスペースから侵入を開始。相手は1人少ないことに加え、ホワイトのカバーに回るのは本職ではない選手。歪なアーセナルの右サイドのユニットを執拗に狙うことは、極めて現実的で効果的な選択だ。 耐え続けたアーセナルだったが、70分にセットプレーから先制点を許すと、79分にキヴィオルのバックパスからPKを献上。さらに追加点を許し0-2という厳しい状況に追い込まれた。 キヴィオルの対応がまずかったのは確かだが、これで彼を責めるのはあまりにも酷だろう。 普段左サイドでプレーしている選手が、右サイドでプレーすることになれば、目に入る景色も守備対応もすべてが180度変わる。イレギュラーな状況でピッチに立つことになった上に、慣れない右CBでの出場。キヴィオルは、誰よりも厳しい環境で果敢に戦ってくれた。 分かりやすいミスはスケープゴートにされやすい。が、目を向けるべき問題はアーセナルが有効な攻撃をほとんど繰り出せなかったことではないだろうか。 筆者は、中盤にテコ入れを図るべきだったと考えている。最終ラインと同じくらい、昨夜のアーセナルの中盤は落ち着きがなかった。