やはり『無能の鷹』は今期を代表するドラマ…思わず笑った井浦新”鳩山”の回想シーンとは? 第5話考察レビュー
菜々緒主演のドラマ『無能の鷹』(テレビ朝日系)が放送中。はんざき朝未の大人気コミックスを原作とした本作は、超有能そうに見える主人公・鷹野ツメ子が実は実は全く仕事ができないという、超脱力系お仕事コメディ。今回は、第5話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】井浦新が微笑ましい…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『無能の鷹』劇中カット一覧
なりたくなかった人間になってない?
「誰でも歳は取る。誰だって老害になる可能性はある」 『無能の鷹』(テレビ朝日系)で鳩山(井浦新)はそう優しく指摘する。8日に放送された第5話は、自分が若い頃になりたくない人間になってしまっていないか見つめ直すことができる、チェックシートのような回となっていた。 今回、フォーカスされたのは部長の朱雀(高橋克実)。「ありがとう」と「ごめん」が言えず、昔話からの自慢話で部下を困らせる。若者との感覚のギャップを埋める気もなく、肩書と地位こそが、その人が生きてきた証だと信じている。 そんな老害であれば、周囲からも疎まれているのも自明の理。ただ、周りからの印象も客観的に把握できていないからこそ、老害への道を突き進んできた。たまたま、鵜飼(さとうほなみ)らが自分のことを「完全なる老害」と話しているのを聞いて愕然とするのだった。 ここまでステレオタイプの老害はなかなかお目にかかれないかもしれないが、朱雀部長が全くの“想像上の生き物”だと決めつけることはできない。歳を取るにつれて「ありがとう」が自然と出にくくなるのは事実だし、自分と一回りも年齢が違えば昔話もしたくなる。 ただ、ここが老害になるかどうかの分かれ道。自分が若い頃、どういう人間になりたかったか、逆にどういう上司になりたくなかったかを思い出すことが必要になる。
パソコンの不具合を恋愛問題と勘違い
妻・亜矢子(中島ひろ子)や娘、息子からも相手にされず、家庭にも問題を抱える朱雀部長が一歩前に進むのもそうした自分を見つめ直そうと考えたから。パソコンがフリーズした朱雀は、開発部である鵙尾(土居志央梨)に電話をかけようと決意。しかし、下手には出たくないというプライドが邪魔をし、鷹野ツメ子(菜々緒)の伝言という形で電話がつながる。 しかし、実際につながっていたのは鵙尾ではなく、純喫茶《MOZU》のママ・百舌子(渡辺えり)だった。パソコンの相談をする朱雀と、恋愛相談だと思い込むママ。 さらに、鷹野のポンコツぶりも相まって今週も見事なすれ違いっぷりが見られ、『無能の鷹』がコメディだったことを思い出させてくれる。 そんな、何のこともないコメディでありながら、開発部・部長の鴫石(安藤玉恵)が勇気を出して朱雀に伝えた言葉は響くものがある。 「何かしてもらったら『ありがとう』」 「迷惑をかけたら『ごめんなさい』」 「たとえ相手が年下でもたとえ自分のほうが立場が偉くても、人として最低限のマナーは守るべき」 これらは当たり前のことだし、子供でさえ幼稚園・保育園に入るまでには親から教わること。同時に、歳を取り、上の立場になる者として忘れてはならないことで、朱雀が鶸田(塩野瑛久)に「ありがとう」と伝えるシーンは不思議な感動を呼ぶ。 直後、社内は一瞬の感動に包まれ、すぐによく考えたら普通のことだと落ち着く流れはリアルでありながら、笑いを誘う。