通天閣、免震工事終了へ 仕切る所長は「ハードルだらけですわ」
通天閣免震工事を仕切る 竹中工務店の永野顕作業所長が語る「ハードルだらけの工事」 THE PAGE大阪
「(昨年の)盆明けから事務所を建てて約9か月。いろいろやらしてもらいました」と語るのは「竹中工務店」大阪本店作業所長の永野顕さん。なにわのシンボル「通天閣」(大阪市浪速区)で行われている免震工事の責任者でもある。今月、その免震工事も終了し、いまは足場などを撤去するなどの作業が残るのみ。そこで、そんな工事現場へ潜入し、永野さんの工事への想い、そして通天閣観光の社長にも話を聞いてみた。
「前例がない」だらけのハードルが高い工事
1956年に完成した現在の2代目通天閣。建設から今年で59年となり、開業時から震動計測が継続的に実施してきた。その結果、鉄骨造建物として構造的な劣化は進んでいなかったが、2011年の東日本大震災を受けての最新耐震診断で「塔の一部が変形する恐れ」があることが分かったという。 いずれ起こるとされる南海トラフ巨大地震発生時のことも考え、通天閣観光では「通天閣『NEXT210(ツーテン)』プロジェクト」の立ち上げを決定。その設計、施工を竹中工務店が引き受けることとなった。 だが、その工事は様々な面で「前例がない」だらけのハードルが高いものとなった。まず、通天閣の耐震構造を「免震」に変えるということ。言ってみれば、通天閣の上部を生かしたまま脚部だけを切り替えるという工事は前例がなかったという。
市道覆う建物の工事、頭ひねり作った「ステージ」
次に立地の問題。通天閣は「市道」を覆うように建てられている。脚部の4本柱の真ん中を市道が通り、車や人が行き交っているため、通行止めなどはたやすくできない。永野さんは「例えば、東京タワーとか名古屋のテレビ塔なんかは、公園の中に建ってるから、いろいろ融通を利かせながら工事ができるんですわ。通天閣は、もろ市道を覆ってますからね」と頭をひねった当時を振り返る。
通常営業をやりながらという前例のない工事
そこで、永野さんが決断したのは通天閣の脚部に一つの「ステージ」を設けることだった。簡単に言えば、人や車が行き交う通天閣が覆う市道の上(高さ地上8メートル)に工事用のステージを設置。そこで、脚部の基礎部分に免震ゴム組み入れるという作業を行うことにした。これにより、資材などは夜間などにそのステージに運び入れ置いておけるスペースもできる。 また、もしそのステージがなかった場合を考えれば、脚部の工事が必要とされる高さ12メートルの部分を下から足場を組んで工事するよりかは、地上8メートルのステージから工事をするほうが、落下事故などを想定しても作業的に安全というわけだ。もちろん、落下物などは絶対あってはならないため、その部分の対策は十二分に行った。 これにより条件の一つである「通常営業をやりながら工事を進める」という前例のない工事も、かなりリスクが軽減できた。資材搬入などは、営業時間終了後の午後9時以降。資材を運んできたトラックなどを下に停車させ、ステージに作られた開閉式の搬入口から資材を入れる。ものを持ち上げるのは、脚部やステージに「クレーン」をつけたため、そのまま荷台から吊り上げることもできる。こうした効率化をはかり、作業はスムーズに進んでいった。