【甲子園プロ注目選手の評価事情】プロ志望の逸材11名のパフォーマンスを総括!スカウトが視察する初戦でアピールできたのは?
第106回全国高等学校野球選手権大会は京都国際の初優勝で幕が閉じた。報道陣にプロ志望を表明したのは8人。スカウトから高評価されながらも検討中なのは3人だ。 【一覧】大会中にプロ志望もしくは、進学などを表明した選手 例年、NPB12球団のスカウトたちが視察するのは、全校が登場する試合日まで。今年は大会7日目~8日目あたりで、大半の球団が視察を切り上げていた。プロ注目選手にとってはアピールするチャンスは初戦のみとシビアだ。 今回はこの11人を対象に大会初戦でどんなパフォーマンスを見せたのか、振り返っていきたい。 *注 A:評価を高めるパフォーマンスを発揮できた B:評価の変動はないが、最低限のアピールはできた C:思うようなパフォーマンスができなかった
スカウト高評価の東海大相模の藤田に続き、190センチ右腕・有馬、関東一のエース・坂井も好アピール
今朝丸 裕喜投手(報徳学園:初戦敗退) 甲子園初戦の投球成績:6.2回 被安打8 四死球1 9奪三振 自責点2 アピール度B 進路:プロ志望届提出表明 世代NO.1と呼ばれた今朝丸の夏は甲子園初戦で終わってしまった。7回途中まで投げて3失点。ただ、ストレートの質自体は非常に良かった。最速146キロで、平均球速143.5キロと、常にマックスに近いストレートを投げることができていた。今朝丸は高めへ伸びるストレートを投げることにこだわっており、この球で三振を奪う姿はあった。120キロ後半のスライダー、フォークの精度も高く、9奪三振を記録する要因となった。ミート力の高い大社打線に不用意にストレートを続けて連打を打たれる展開もあったが、大きな故障もなく、順調に来ていた。U-18代表では世代NO.1右腕に相応しい投球を期待したい。 藤田 琉生投手(東海大相模:ベスト8) 甲子園初戦の投球成績:7回 被安打3 四死球2 奪三振13 自責点0 アピール度A 進路:未定 準決勝敗戦後は、進路は検討中と答えた藤田だが、12球団の評価は非常に高いと見られている。 大会6日目に登場した藤田は相手の富山商打線が直球狙いとみて、変化球主体の投球で13奪三振、無失点の快投。常時140キロ中盤の速球、ナックルカーブ、スライダー、チェンジアップ。いずれも一級品だった。神奈川大会に続いての快投。U-18代表にも選出された。28日に行われる対大学代表戦、U-18本大会でも好投し、さらに評価を高めることができるか。 髙尾 響投手(広陵:3回戦敗退) 甲子園初戦の投球成績:9回 被安打6 四死球1 奪三振7 自責点1 アピール度B 進路:プロか社会人 3回戦の東海大相模との試合後、「プロか社会人」と答えた。甲子園では調整がうまく行かず、調子を崩しているように感じた。 まず完投勝利を挙げた2回戦の熊本工戦では常時130キロ後半の速球で、140キロが出ることが稀だった。ただ9回裏、一死二、三塁の場面でその日最速146キロのストレートで見逃し三振を奪い、続く打者も133キロのフォークで三振を奪い、それまでのらりくらりで抑えていたイメージを一変させるものだった。しかし3回戦の東海大相模戦ではストレートが走らず、1.2回で5失点。センバツと比べると状態が悪く、良い時は熊本工戦の9回裏の打者2人だけだった。これまでの実績はあるが、スカウトはどう評価するか。今年に限ってはセンバツ後の代表合宿で、リリーフで最速148キロの速球、平均球速142キロ、130キロ中盤のスプリットで打者を圧倒する投球があった。U-18代表では、打者を圧倒し、再評価されるような投球ができることを期待したい。 有馬 恵叶投手(聖カタリナ:初戦敗退) 甲子園初戦の投球成績:7.2回 被安打4 四死球6 奪三振3 自責点1 アピール度A 進路:プロ志望届提出表明 地方大会の投球と比べても進化していたのが、有馬だ。夏前は直球の最速は140キロという紹介だったが、夏の愛媛大会で143キロと最速を更新した。そして甲子園では最速146キロと、短期間でここまで成長した投手も珍しい。120キロ後半のフォークも低めに鋭く落ちて、8回途中まで投げて1失点の好投だった。6四死球をはあったものの、うまくまとめていた。自信をつけた有馬は試合後、「高卒プロです」と言い切った。190センチの長身で、フォームの動きもしなやか。大舞台で自身最高の投球を見せ、右投手ではかなり評価を上げた投手ではないか。 坂井 遼投手(関東一:準優勝) 甲子園初戦の投球成績:6回 被安打3 四死球0 奪三振5 自責点0 アピール度A 進路:未定 惜しくも甲子園準優勝に終わったが、リリーフとして躍進した坂井は大会通して、18.2回を投げて防御率0.00の快投だった。これまでの坂井といえば、伸びのあるストレートが凄まじいものの、高めに浮いて痛打され、コントロールを崩して、失点というケースが多かった。しかし、初戦の北陸戦はそれまでの坂井のイメージを一変させるものだった。4回表からリリーフした坂井は最速149キロの速球、スライダー、カーブ、チェンジアップを丁寧に投げ分けていた。ストレートは強弱をつけながら、テンポよく試合を組み立てており、成長が見られた。坂井自身はプロ野球選手になりたい思いは強いが、プロ志望届を提出するかは米澤 貴光監督と相談して決めるという。