「子どものため」と離婚に踏み切れない。壮絶サレ妻の気持ちを変えた不倫夫の発言とは?【書評】
夫が何より最低なのは、不倫を楽しむあまり熱を出して苦しんでいる息子に気づきもしないことだ。勤務時間に不倫相手のサオリを家に連れ込もうとして、息子の看病のために在宅していたマリコとハチ合わせてしまう。この最悪の状況でも、サオリは自分が夫の隣にいることは当然と言わんばかりの態度で「どうして離婚しないんですか?」と言い放つ。
マリコは、ハルをひとり親にしないためだけに離婚を踏みとどまってきた。しかし、その前日に発熱していた子どもの様子にも気づかない、あまりにも酷い夫の発言にそれは間違っていたのだと気づく。「あんたみたいなバカに父親面されるより母子家庭の方がずっとマシ!!」というマリコの言葉には、読者の気持ちのすべてが詰まっている。不倫の制裁を受けるシタ側の破滅に「ざまあみろ」とスカッとしたいところだが、物語はここからスリリングな展開に向かっていく――。 ありありと描かれたマリコの葛藤とスリリングな離婚劇の後には、マリコとハルの幸せな人生が待っている。笑顔で暮らせるようになったマリコたちの物語を、ぜひ最後まで見届けてもらいたい。 文=ネゴト/ 押入れの人